「おいラーン、あの尖った石みてえなトゲ、どうするんだ?」イシェが慎重に足先を動かした。ラーンの背後から声をかけた。ラーンは遺跡の奥深くへ進んでいくと、振り返りもしないで言った。「気にすんな、ただの岩だ。ほら、この壁、何か刻まれてるぞ」
イシェは仕方なくラーンについていった。埃っぽい空気を吸い込みながら、彼女は周囲を警戒した。遺跡の中は薄暗く、不気味な静けさだった。ラーンの言う通り、壁には複雑な模様が刻まれていた。
「これは…?」イシェが手を伸ばそうとした時、テルヘルが制止する。「触るな、危険だ」テルヘルの声は冷たかった。「この遺跡の仕掛けは解明されていない。不用意に動かすな」
ラーンの顔色が変わった。「おい、テルヘル、何だその口ぶりは?俺たちを騙そうとしてるのか?」テルヘルは鋭い視線でラーンを見据えた。「私は約束を守っている。遺物を独占する権利を得るために、お前たちを利用しているだけだ。危険な場所へ案内するのは当然の義務だ」
イシェがラーンの腕をつかんだ。「落ち着いて、ラーン。テルヘルは正しい。ここは本当に危険だ。あの尖った石…あれに触れた冒険者たちが、みんな命を落としたという噂がある」
ラーンの目は少しだけ冷静になった。彼は深呼吸をして、壁の模様をよく観察し始めた。「よし、わかった。無理はしない。でも、何か見つけたら、必ず分け前をくれよな、テルヘル」
テルヘルはわずかに頷いた。三人は慎重に遺跡を進んでいった。協力し合うことで、彼らは危険な状況を乗り越えていくのだ。