ラーンが興奮気味に巨大な石扉をこじ開け始めた時、イシェは眉間にしわを寄せた。「ちょっと待てよ、ラーン。あの記号、見たことがある気がするんだ」と、扉の脇にある壁画を指さした。そこに描かれていたのは、複雑に絡み合う幾何学模様だった。
「あー、またイシェが面倒くさいこと言い出したよ」ラーンは扉を押し続けながら言った。「そんな記号なんてどうでもいいだろ?早く中に入って宝探しがしたいんだ!」
「でも、あの記号…どこかで見たことがあるような…」イシェは不安げに呟いた。その時、テルヘルが近づき、壁画を見つめ始めた。「興味深いですね」と彼女は低い声で言った。「これは古代ヴォルダン帝国の『元素制御』に関する記号です。強力なエネルギーを封じ込めるために用いられていたと記録に残っています」
「元素制御…?」ラーンは首を傾げた。「そんな面倒くさいことより、宝だ!早く中に入ろう!」
しかし、イシェはテルヘルの言葉に真剣な表情を見せた。「もし、この扉が本当にヴォルダン帝国の遺跡の一部なら…」と彼女は言葉を濁した。
テルヘルは小さく頷いた。「可能性は十分にあります。そして、もしこの扉を無理やり開けた場合、危険な化学反応を引き起こす可能性もある」
ラーンの顔色が変わった。「化学反応…?そんなこわそうなことあるわけないだろ!」
「しかし、ヴォルダン帝国の技術は、我々が想像する以上のものである可能性があります」テルヘルは冷静に言った。
イシェはラーンを制止し、「ちょっと待とうよ、ラーン。無理に開けずに、安全な方法で中を確認できないか考えてみよう」と提案した。ラーンの不機嫌そうな顔を見ながらも、イシェはテルヘルの言葉を信じ、慎重に扉の周囲を調べ始めた。
彼らの前に広がるのは、古代文明の謎と危険。そして、その中に眠る未知なる化学反応の脅威。