ラーンの粗雑な剣の扱いにイシェは眉をひそめた。いつも通り、彼は計画もなしに遺跡へと突入したのだ。テルヘルが用意した地図には記されていない通路を進み、朽ちかけた石畳の上を足音だけが響いていた。「ここは一体…」イシェの言葉は途中で途絶えた。壁一面に描かれた不気味な模様が、かすかに光り始めたのだ。
「何だこりゃ?」ラーンが近づき、壁に触れると、床から冷たい風が吹き出した。イシェは背筋が凍りつくのを感じた。まるで、何かが目を覚ましたような気がしたのだ。その時、遠くで鈍い音が響き渡った。
「あれは…」テルヘルが顔をしかめた。「ヴォルダンの兵士だ」。彼女の瞳に冷たい光が宿る。「計画通りではないが、ここで引き下がるわけにはいかない」。彼女は剣を抜くと、ラーンとイシェの視線に鋭く光を放つ。「準備はいいか?この遺跡から生還できるかどうかは、今のこの瞬間にかかっている!」
ラーンの胸は高鳴っていた。戦いの熱気と、同時に、テルヘルの存在が彼に何かを与えてくれるような気がした。イシェは動悸を抑えながら、自分の判断を疑った。だが、ラーンの隣にいることで、どこか安心できるものがあった。3人は互いに力を合わせて、闇へと進んでいった。