「よし、今日はあの崩れた塔だな」ラーンの腕を振るう声はいつもより力強い。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の計画書を眺めた。「またしても無計画だ。あの塔は崩落してから百年以上経っている。危険すぎるぞ」
ラーンはイシェの言葉に耳を貸さず、「ほら、テルヘルさんも言ってただろう?あの塔には古代文明の秘宝が眠っていると!俺たちの夢が叶うチャンスだ!」とばかりに興奮気味に笑った。
テルヘルは冷静に地図を広げながら言った。「ラーンの言う通りだ。しかし、危険を軽視するな。あの塔には何らかのトラップが残されている可能性もある。特に崩落箇所は要注意だ」
イシェはテルヘルの言葉に少し安心した。彼女の慎重さはいつも頼りになる。だが、ラーンの無謀さに巻き込まれるのも日常茶飯事だった。
「わかったわかった。イシェ、準備はいいか?」
ラーンは剣を手に取り、意気揚々と塔へと向かった。イシェはため息をつきながら、テルヘルに視線を向けると、彼女は静かに頷いた。「準備は万端だ」と。
崩れた塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。ラーンの足音だけが響き渡る。イシェは慎重に足元を確認しながら進んだ。
「ここだな!」ラーンが興奮した声で叫んだ。崩落した壁の隙間から、何か光り輝くものが覗いていた。「古代文明の秘宝だ!きっと大金持ちになれる!」
イシェはラーンの様子を見て、不安になった。彼の興奮は、まるで勉強熱心な学生が試験前に必死に詰め込むように、どこか不自然に思えた。
テルヘルは冷静に状況を分析していた。ラーンの行動は衝動的だが、彼の無謀さの裏には、何か深い理由があるような気がした。彼女はラーンの過去について、もっと知りたいと思った。