ビレーの薄暗い酒場に、ラーンとイシェは疲れ切った様子で戻ってきた。今日の遺跡探査は空振りに終わり、二人は無気力に酒を傾けていた。
「また空っぽか…」
ラーンのため息が重い。イシェは静かにうなずく。
「テルヘルはどこ?」
ラーンが尋ねると、イシェはテーブルの端にある手紙を示した。「新しい依頼だと言っていた。」
ラーンの顔色が変わった。「まさか…あの場所?」
イシェは頷いた。「ヴォルダンとの国境に近い、あの危険な遺跡だ。」
ラーンの目は燃えた。「あの遺跡には、大穴があるって言う噂だぞ!もし本当なら…」
しかしイシェは冷静に言った。「危険すぎる。勅令で立ち入り禁止になっているんだぞ。それにテルヘルが何を企んでいるのか分からない。僕たちはただの道具にされているかもしれない。」
ラーンはイシェの言葉を無視して、興奮気味に言った。「大穴が見つかったら、僕たちの人生が変わる!あの富と名声があれば…」
イシェはため息をついた。「いつまでそんな夢を見るんだ…?」
その時、酒場にテルヘルが現れた。彼女はいつも通りの冷たい表情で、二つの封筒をテーブルの上に置いた。
「次の依頼だ。今回は報酬も倍にする。」
ラーンの目は輝き、イシェの顔色が硬くなる。
テルヘルの言葉は冷酷だった。「失敗したら、二度と会えないだろう。」
二人は互いに顔を見合わせた。勅令に反する危険な遺跡探査。彼らの運命は、今まさに大きく変わる瞬間を迎えていた。