ラーンが遺跡の入り口で息を切らしている間に、イシェは既に地図を広げ、崩れかけた石畳の配置を確認していた。「ここだな。以前調査した記録によると、この奥に小さな部屋があるはずだ」イシェは眉をひそめた。「ただし、天井が不安定らしく、落下物には注意が必要だと記されている」
ラーンは鼻をくすぐりながら、「そんなこわそうな話より、早く宝探しの準備を始めろってんだ!」とばかりに剣を構え始めた。テルヘルは静かに彼らを眺めていて、「宝探し?」と冷えた声で言った。「私はあくまで目標達成のためにあなたたちを使っている。危険な場所ほど価値のあるものがある、というだけの話だ」
イシェがため息をつく間もなく、石畳の上で音がした。小さな石が転がり落ちてきた。ラーンの顔色が変わり、「おい、待て!」と叫んだが、もう遅かった。天井から大量の岩が崩れ落ち、ラーンを押しつぶすように落ちてくる。イシェは咄嗟にラーンをかばおうとしたが、テルヘルが先に飛び出した。彼女の黒いローブが闇に紛れて動き、鋭い光が一瞬閃いた。
次の瞬間、岩の雨は止んだ。テルヘルが剣を抜き、崩れた天井の隙間から差し込む光の中に立っていた。「何だかわかったか?」彼女は冷たい目でラーンを見た。「この遺跡は、単なる宝の山じゃない。何かが眠っている。そして、それが私たちを呼んでいる」