ビレーの朝はいつも薄暗い霧に包まれていた。ラーンはイシェを待たずに一人で酒場から飛び出した。昨日の遺跡探索で手に入れた小さな水晶のかけらを見つめていた。
「いつか、俺はこの手で大穴を開けてやるんだ!」
そう呟きながら、彼は剣を背負い、霧の中に消えていった。
イシェはいつものように遅く起きた。ラーンが居ないことに少し驚いたが、すぐに諦めた。彼がどこへ行くかは大体予想が付くからだ。
「また遺跡にでも行ってるのかな」
彼女は小さくため息をつき、朝食を済ませると、ラーンの後を追いかけるように街を出た。
ビレーの街はずれにある小さな工房では、テルヘルが鋭い目で何かを加工していた。それは、ヴォルダンで手に入れた、不思議な金属の板だった。
「この加工技術があれば…」
彼女は呟きながら、板に刻印を施した。その刻印は、まるで古代の文字のようだった。
ビレーから少し離れた場所にある遺跡の入り口。ラーンが一人で、剣を構えて立っていた。彼の目の前で、霧の中から何かが姿を現し始めた。それは巨大な石像で、その目は赤く光っていた。
「これは…」
ラーンの顔色が変わった。彼は石像の力を察知したのだ。
イシェは少し遅れて遺跡に到着した。ラーンが一人で石像と対峙しているのを見て、驚いた。
「ラーン!危ない!」
彼女は駆け寄り、ラーンと共に石像に立ち向かった。二人は息を合わせるように剣を振るい、石像を攻撃する。しかし、石像の力は強く、二人の攻撃はほとんど通用しない。
その時、テルヘルが遺跡に現れた。彼女は手の中に小さな水晶のかけらを持っていた。
「この力を利用して…」
彼女は水晶を石像に向けて投げつけた。水晶は石像に当たると、 blinding light を放ち、石像の動きを一瞬止めた。その隙にラーンとイシェは石像に致命的な一撃を加えることができた。
石像は崩れ落ち、遺跡に静寂が戻った。三人は息を切らしながら、互いに顔を見合わせた。
「あの水晶…」
イシェがテルヘルに尋ねると、テルヘルは少しだけ微笑んだ。
「これは加工したもので、ヴォルダンで手に入れた技術を利用したものなのよ」
彼女はそう言うと、水晶のかけらを握りしめ、遺跡の奥へと歩み始めた。