ラーンの大男の体躯が、薄暗い遺跡の入り口を狭く塞ぐように立っていた。イシェは背後から彼を押すように促した。「早く、ラーン。日が暮れるぞ」。ラーンは不機嫌そうに振り返り、「待てよ、イシェ。この紋章…見たことあるぞ」。彼は崩れかけた石壁に刻まれた紋章を指差した。イシェは眉間に皺を寄せながら近づき、一瞬だけ紋章を睨んだ。「どこかで見たような…」と言い残し、ラーンの後ろを歩き始めた。「早く行こう」。テルヘルが鋭く切り捨てた。
遺跡内部は湿った土と石の匂いが充満し、薄暗い空気が重くのしかかっていた。彼らの足音だけが、静寂にこだましていた。テルヘルは地図を広げながら、「目標地点まではあと少しだ」と呟いた。彼女はいつも冷静沈着で、まるでこの遺跡が彼女の掌の上にあるかのようだった。
「おい、イシェ、見てみろ！」ラーンの声が響き渡った。彼は崩れた石の下から、錆び付いた金属の箱を発見していた。「これは…宝箱か！？」。イシェは興奮気味に駆け寄ったが、テルヘルは眉をひそめた。「慎重に開けろ」。ラーンが無理やり蓋を開けると、中には古い巻物と、奇妙な形の水晶が入っていた。
「何だこれ…」イシェは巻物を慎重に手に取った。そこに記されていたのは、古代の言語で書かれた呪文だった。「これは…」。イシェは息を呑んだ。「強力な魔術を扱う呪文だ」。テルヘルは水晶を手に取り、冷たく光る表面をじっと見つめた。「この水晶と呪文が組み合わされば…」彼女は考え込んだ。「恐ろしい力になる可能性もある」。ラーンは興奮気味に言った。「これで大穴が見つかるぞ！」。イシェは冷静さを保ちながら言った「でも、その力は…危険かもしれない」。
テルヘルは水晶を握りしめ、「この力を利用すれば、ヴォルダンへの復讐を果たせる…」と呟いた。彼女は自分の目的のためなら、どんな犠牲も厭わない覚悟を決めていた。 ラーンとイシェの未来、そしてこの遺跡から発掘された力は、一体どのような功罪を生み出すのだろうか。