「よし、今回はあの崩れかけた塔だ!噂では奥に秘宝が眠っているらしいぞ」ラーンの目が輝き、イシェの眉間にしわを寄せた。
「また大穴か? そんな話は聞いたこともないわ。それにあの塔は危険だって言われてるじゃないか。」
「大丈夫だ、イシェ。俺が先頭に立って行くから。ほら、テルヘルさん、どう思う?」ラーンの期待のこもった視線がテルヘルに向けられた。彼女は冷静に地図を広げ、塔の構造を指さした。「塔の内部は複雑で、崩落箇所も多い。慎重に進まないと危険だ。特に3階部分は要注意だ。過去の記録によると、そこには何らかの仕掛けがあるらしい。」
「仕掛けか…楽しみになってきたぞ!さあイシェ、準備はいいか?」ラーンの興奮にイシェはため息をついた。「準備はいいけど、何かあったら責任取るわよ。必ず大穴を見つけるって約束したじゃない!」
彼らはビレーから離れた廃墟の街へ向かった。かつて栄えた都市は今や荒れ果て、朽ちかけた建物が風に揺られていた。塔を目指し、彼らは崩れかけた道を慎重に進んだ。
「ここからは俺たちが先導する」テルヘルが剣を抜き、イシェも小刀を構えた。ラーンは彼らの後ろを歩いた。塔内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。足元には落ち葉や石ころが散らばり、時折不気味な音が聞こえてきた。3階に近づくにつれて、緊張感が高まった。
「ここだ…」テルヘルが扉の前に立ち止まり、慎重に開けた。扉の向こうは暗闇で、不吉な空気が漂っていた。彼らは懐中電灯を点けて部屋の中を照らした。そこには石畳の床と壁一面に描かれた壁画が広がっていた。壁画は古代文明の姿を描いており、その中心には巨大な祭壇があった。
「これは…」イシェが息をのんだ。「古代文明が残した遺跡か…。もしかしてここが噂の秘宝の場所なのか?」ラーンは興奮気味に言った。
その時、床から突然光が放たれ、部屋全体を照らし出した。壁画が輝き出し、祭壇の上には宝石が散りばめられた黄金の冠が現れた。ラーンの目は輝き、イシェは息を呑んだ。
「見つけたぞ!大穴だ!」ラーンは大声を上げた。
テルヘルは静かに言った。「これはただの秘宝ではない。古代文明が残した重要な遺物だ。これを我々の手に。」
彼らは慎重に冠を持ち上げようとしたその時、壁画が再び光り輝き、部屋の床が崩れ始めた。彼らは慌てて逃げ出したが、ラーンは足を取られ、崩落する床に引きずり込まれた。
「ラーン!」イシェとテルヘルが駆け寄るも、ラーンの姿はもう見えなかった。崩れた床からは埃と石が噴き出し、部屋全体を闇に包んだ。
イシェは絶望的な表情で言った。「ラーン…」
テルヘルは冷静な眼差しで状況を見渡した。「遺物は手に入れたが、大きな功績にはならなかった…」。そして彼女は沈黙のうちに、次の行動を考えるのだった。