ラーンが遺跡の入り口で深呼吸をする。いつもより空気が重い。イシェは眉間に皺を寄せて地図を広げている。「ここが最後のポイントだ。あとはあの崩れた塔の中らしい」
「よし、行こうぜ!」
ラーンの豪快な声にイシェはため息をついた。「慎重にやらないと、また宝のありかが分からなくなるぞ」
テルヘルは背後から鋭い視線を送る。「無駄な動きはしない。目標を達成したらすぐに引き上げる」
崩れた塔の中は薄暗く、埃っぽい空気が充満していた。足元の石畳が崩れ落ちている箇所もあり、一歩一歩慎重に進む必要がある。ラーンの大剣が壁に当たって鈍い音を立てるたびにイシェの心臓が跳ねる。
「何かあった?」
テルヘルの低い声が響き渡る。「少し前、何かが動いた気がした」
イシェは緊張を隠せない。ラーンはいつものように無邪気に笑っていたが、彼の瞳にも不穏な光が宿っている。
塔の奥深くで、彼らは巨大な石棺を発見する。その上には、奇妙な文字が刻まれた金色のプレートが置かれている。
「これは…」イシェは声を詰まらせた。「古代ヴォルダン人の王家の紋章だ」
テルヘルは目を細めた。「ここが彼女の隠れ家だったのか…」
ラーンは石棺の蓋に触れると、重々しく開いた。中には、輝く宝石で飾られた王冠があった。
「やったぜ!」ラーンの声が高らかに響く。
だがその瞬間、石壁から何者かが現れた。黒曜石のような鎧を身にまとい、鋭い牙を剥き出しにする獣の怪物だ。
「ヴォルダン軍か…」イシェは剣を抜く。
テルヘルも daggers を構えた。「ここは私のものだ。誰にも渡さない」
ラーンは王冠を手に取る。「おい、待てよ!俺たちが最初に発見したんだぞ!」
「黙れ!」テルヘルは怒鳴った。「この遺跡はヴォルダンに割譲された土地の一部だった。その証がここに存在するのだ」
ラーンの顔色が変わる。イシェは彼の手を掴む。「ラーン、逃げろ!」
怪物が襲いかかってくる。三人は立ち向かうが、その力は圧倒的だ。イシェはラーンの腕を引っ張り、塔の奥へと逃げる。
「何をしているんだ!?」ラーンは抵抗する。
「もう諦めなさい!あの王冠は、ヴォルダンに渡すしかない!」イシェは必死に叫ぶ。
ラーンの顔には、初めて見るほどの絶望の色が浮かんでいた。