「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂によると奥深くには未開の部屋があるってな」
ラーンが興奮気味に地図を広げると、イシェは眉間にしわを寄せた。
「またしても噂話か？ ラーン、そんな不確かな情報ばかりを追いかけていたら、いつまでも大穴には辿り着けないぞ」
「でも、イシェ！ この塔は昔、ヴォルダン軍に占領されたんだって！もしかしたら、ヴォルダンが隠した財宝が残っているかも！」
ラーンの目は輝き、イシェはため息をついた。
「またヴォルダンだ。いつまでその復讐劇を続けるつもりだ？」
「復讐じゃない！俺は単に、ヴォルダンが奪ったものを取り戻そうとしているだけだ」
テルヘルは冷たく言った。彼女の瞳には燃えるような怒りが宿っていた。イシェはテルヘルの言葉に沈黙し、ラーンは少しだけ表情を曇らせた。
崩れた塔の入り口は、石で塞がれ、苔むした壁には刻印が深く刻まれていた。まるで警告のように。
「ここだな。よし、開けてみよう」
ラーンの力強い一撃で石は崩れ落ちた。埃っぽい空気が流れ込み、朽ち果てた階段が見えた。
「気をつけろ、何かいるかも分からんぞ」
イシェが剣を構えると、ラーンもそれに続く。テルヘルは後ろから静かに二人を見守りながら、刻印をじっと見つめていた。その中には、ヴォルダン軍のシンボルと、見覚えのある奇妙な模様が組み合わさっているように見えた。
「これは…！」
テルヘルの声が震えた。それは、彼女がずっと探していたものだった。