ビレーの朝焼けが、ラーンの寝顔に直接当たった。いつも通り、イシェが先に起きていた。「起きろよ、遅れたらテルヘルに怒られちまうぞ」とイシェが言った。ラーンはあくびをしながら立ち上がった。昨日も遺跡で何も見つからなかった。
「今日は何かあるといいな」
ラーンの言葉に、イシェは小さく溜息をついた。彼女はいつも通り、冷静に準備を始めた。「大穴」を見つけるというラーンの夢を、イシェはどこか諦めていた。
テルヘルが待つ場所に着くと、彼女は既に地図を広げて待っていた。今日の遺跡は、ビレーから少し離れた山の中腹にあるらしい。「今回は慎重にやろう。ヴォルダン軍の動きが活発になってきてるんだ」テルヘルの言葉には力強さがあった。彼女は何かを隠しているようにも見えたが、ラーンには何も分からなかった。
遺跡の入り口は崩れかけていて、薄暗い通路が続いている。ラーンの足音が響き渡り、イシェは緊張した表情で周囲を見回した。テルヘルは先頭を歩き、時折地図を確認しながら進路を指示する。
「ここからは、刻み」が刻まれた壁が現れるはずだ。気を付けて」
テルヘルの言葉に、ラーンの心拍数が上がった。刻みとは、古代文明が残した謎の記号のことだった。遺跡の奥深くには、刻みに秘められた力があると伝えられていた。
しかし、その刻みが持つ真の力は、まだ誰も解明できていなかった。そして、その力を巡って、ヴォルダンとの戦いが始まろうとしていたのだ。