ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑っていた。「今日の遺跡は、あの水晶の欠片が見つかった場所だぞ!もしかしたら、もっと大きなのが眠ってるかもな!」
イシェは眉をひそめた。「そんな安易な期待は禁物でしょう。ましてや、あの場所へは危険すぎる」
ラーンの視線は、イシェからテルヘルへと移った。「どうだ、テルヘル?一緒に探検しないか?」
テルヘルは静かにワイングラスを傾け、「私はこの街に用事がある。遺跡探索は、あなたたちにお任せしましょう」と答えた。その目は、どこか遠くを見つめているようだった。
ラーンの顔色が変わった。「おいおい、テルヘル!俺たちは、お前が約束した報酬のために命懸けで遺跡を探してるんだぞ!」
「報酬については約束通りに支払うわ」テルヘルの声は冷たかった。「しかし、私とあなたの目的は異なるということを忘れないでください」
イシェはラーンの肩を叩いた。「落ち着け、ラーン。テルヘルには、独自の事情があるんだろう」
その夜、ビレーの街は静まり返っていた。ラーンとイシェが遺跡へと向かう道中、イシェはラーンの腕を掴んだ。
「ラーン、何か変だぞ。テルヘルの言葉…あの水晶の欠片…。何か隠されていることがあるような気がする」
ラーンは苦い顔をした。「なにかあったとしても、俺たちには関係ないだろう。俺たちは、ただ大穴を探してるだけだ」
しかし、イシェは彼の言葉を信じることができなかった。テルヘルの言葉が、まるで刺激のようなものとなって、彼らを未知の世界へと引きずり込んだように感じた。