「よし、今日はあの迷宮跡へ行くぞ!」
ラーンがそう言うと、イシェはため息をついた。「またあの危険な場所? 以前も言った通り、安全な遺跡を選んで探索した方がいいんじゃないか?」
ラーンの瞳は輝いていた。「いや、今回は違う! この迷宮跡には、古代の剣の噂があるんだ! 想像を絶する価値があるはずだ!」
イシェは彼を見つめた。「価値があると信じるだけで飛び込むのは危険すぎる。特に今、ヴォルダンとの緊張が高まっている時こそ慎重に進めるべきだ」
その時、背後から涼しい声が響いた。「二人とも、準備はいいか?」
ラーンとイシェが振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の鋭い目は、いつものように冷酷に輝いていた。
「今回は特に注意が必要だ。ヴォルダンからの動きが活発になっているらしい。遺跡探査中の襲撃の可能性もある」
ラーンの顔色が変わった。「襲撃? なんで?」
テルヘルは言葉を濁した。「詳しいことは言えない。ただ、お前たちには危険が及ぶ可能性がある。だから今回は特に用心しろ」
イシェは不安を感じながら、三人が遺跡へと向かうのを見送った。迷宮跡は深い森に囲まれており、不気味な雰囲気を漂わせていた。
ラーンは興奮を抑えきれない様子で迷宮跡へ入っていったが、イシェはどこか落ち着かない。テルヘルの言葉が頭から離れなかった。
遺跡の奥深くを進んでいくと、突然、何者かの気配を感じた。ラーンとイシェは剣を構えた。影がゆっくりと現れ、その姿は鋭い刃物を持った男だった。
「お前たちだ!」男は声を荒げた。「ヴォルダン様に仕える者だ! 遺跡の情報を奪うために来た!」
ラーンは怒りを露わにした。「テメーがヴォルダンか! やる気か?」
男は冷たく笑った。「当然だ。お前たちは邪魔だ」
激しい戦いが始まった。ラーンの剣と男の刃が激しくぶつかり合った。イシェは必死に二人の動きを分析し、隙を突こうとした。
その時、背後から新たな影が現れた。もう一人の刺客だった。イシェは驚愕した。「まさか…」
二人は挟み撃ちに遭い、苦戦を強いられた。ラーンは奮戦するが、男の技は巧みで、徐々に追い詰められていく。イシェは必死に抵抗するが、敵の数は多すぎる。
その時、テルヘルが間合いを縫うように現れ、二つの剣を振るった。彼女の動きは素早く、正確だった。刺客たちは驚き、一瞬の隙を見せた。
ラーンとイシェはその隙に反撃し、刺客たちを倒した。しかし、戦いはまだ終わらなかった。
「逃げるな!」テルヘルが叫んだ。「ヴォルダンに情報を渡すな!」
刺客たちは逃げようとしたが、テルヘルの追跡は容赦なく、一人を捕らえた。残りの刺客は必死に逃げ去った。
イシェは息を切らしながら、テルヘルを見つめた。「なぜ…なぜヴォルダンがこんなことを?」
テルヘルは答えた。「それは…お前たちに言うべきではない」