ラーンの大声を遮るようにイシェが手を挙げた。「待て、ラーン。あの壁画、よく見ろ。」
ラーンは眉間に皺を寄せながら壁画を見つめた。複雑な幾何学模様が刻まれており、中央には何かが描かれているようだが、崩れかかった壁のせいで全体像は捉えきれない。
「何だ、これ?」
イシェは指で模様をなぞった。「これは古代ヴォルダン人の文字に似ている。もしかしたら、この遺跡に関する情報が記されているかもしれない。」
ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダン?まさか、あのヴォルダン?」
テルヘルは静かに口を開いた。「ヴォルダン人はかつてこの地域を制覇した強力な民族だ。彼らの遺物には危険な力を持つものも多い。慎重に進もう。」
ラーンの瞳に闘志が燃えた。「危険な力か...それならなおさら手に入れたい!イシェ、壁画を解読できるのか?」
イシェはため息をついた。「無理だ。この文字は複雑で、さらに劣化が進んでいる。時間をかけて分析する必要がある。」
「そんな時間はない!」ラーンが叫んだ。「ヴォルダン人が遺した遺跡には必ず財宝があるはずだ!俺たちはこの遺跡を制覇して、大穴を開ける!」
テルヘルはラーンの熱意に少しだけ心を揺さぶられた。彼女はヴォルダンへの復讐心から、この遺跡に秘められた力を利用しようと考えていたが、ラーンの無邪気な冒険心に共感してしまう自分もいる。
「よし、わかった。」イシェが言った。「まずはこの壁画を記録し、後から分析する。そして、この遺跡の奥深くにある真実にたどり着こう。」
3人は互いに顔を見合わせ、深く頷いた。彼らの前に広がるのは未知なる遺跡の謎と、それを制覇する為の険しい道のりだった。