ラーンが、錆びた剣を片手に遺跡の入り口を見下ろした。目の前には、崩れかけた石造りの階段が深く闇へと続いている。イシェは後ろから彼に近寄って、小さくため息をついた。
「またしても危険な場所か？ ラーン、あの噂を聞いただろう？ この遺跡には呪いがかけられていると言われているんだ。」
ラーンの顔は自信に満ち溢れていた。「そんなもの気にすんなよ、イシェ。俺たちにはテルヘルが一緒だぞ。それに、大穴を見つけたら全ての苦労も報われるさ！」
イシェは彼の言葉に苦笑した。「大穴…」 確かに、ラーンの夢を叶えるためなら、どんな危険も恐れずに遺跡に挑む彼には、イシェ自身もついていくしかないと感じていた。
テルヘルが近づいてきて、鋭い眼光で遺跡を見つめた。「準備は良いか？ この遺跡にはヴォルダンが隠した秘密があるという情報を得た。我々はそれを奪い取るのだ。」
彼女の言葉にラーンとイシェは互いに頷き合った。テルヘルの目的はヴォルダンへの復讐だった。彼女は過去にヴォルダンに全てを奪われた女性で、その憎しみは彼女を燃やす炎のように強く、彼らを巻き込んでいく。
遺跡内部は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。足元には石畳が敷かれており、ところどころ崩れていて歩きづらかった。彼らは慎重に進んでいき、壁に描かれた謎の記号を注意深く観察した。
すると、突然、奥の方から低い唸り声が響き渡った。ラーンは剣を構え、イシェも緊張して周囲を見回した。「何かいるぞ…！」
闇の中から巨大な影がゆっくりと現れ、彼らに襲いかかってきた。それは、獣のような姿をした怪物だった。ラーンの剣が怪物に深く突き刺さるも、その傷はすぐに癒えていくようだった。
「これは…！」 イシェの声が震えた。「呪いの力だ…」
テルヘルは冷静に状況を判断し、魔法の書から呪文を読み上げ始めた。しかし、怪物は彼女の魔法をものともせず、ラーンを容赦なく攻撃した。
その瞬間、イシェが立ち上がった。彼女は普段は慎重で臆病な性格だが、ラーンのピンチには常に駆けつけていた。彼女は小さな体で巨大な怪物に立ち向かい、素早い動きで剣を振り下ろした。
イシェの攻撃は怪物に致命傷を与えることはできなかったものの、その隙にラーンは立ち上がり、再び怪物に斬りかかった。二人は息を合わせて戦い、ついに怪物は倒れた。
激しい戦いの後、三人は息も絶え絶えだった。しかし、彼らの前に広がるのは、かつてヴォルダンが築いたとされる古代の遺跡の真の姿だった。そこには、巨大な祭壇があり、その中央には輝く宝石が鎮座していた。
「これが…ヴォルダンの秘密か…」 テルヘルは宝石を手に取り、目を輝かせた。「これで、ついに…！」
その時、遺跡の奥から不気味な声が響き渡った。「汝ら、この地に踏み入った者は、制裁を受けるのだ…」
三人は振り返ると、そこには巨大な影が立っていた。それは、ヴォルダンの力を宿す守護神だった。彼らの前に立ちはだかる巨大な壁。そして、テルヘルの復讐への道は、まだ遠くにあることを示すかのように…。