ビレーの粗末な酒場「錆びた剣」で、ラーンが豪快に笑っていた。「また大穴だ!今回は絶対に財宝が見つかるぞ!」彼の目の輝きは、まるで遺跡の奥底に眠る宝石を垣間見たかのような確信に満ちていた。イシェはため息をつきながら、テーブルに置かれた粗雑な地図を指さした。「ラーン、あの遺跡は以前から危険だと言われているだろう。罠が仕掛けられてるとも言われてたし、そもそもあの地域はヴォルダンの監視下に…」
「そんなの気にすんな!」ラーンはイシェの言葉など耳に入れない。「テルヘルが報酬を上げてくれたんだから、行かない理由はないだろう?」彼の視線は、酒場の一隅で静かに食事をするテルヘルの姿に向けられた。彼女の顔色は硬く、深い影を宿していた。
「今回の依頼は重要だ。」テルヘルは冷たく言った。「ヴォルダンに奪われたものを取り戻す鍵が、あの遺跡にある。お前たちには危険だが、成功すれば十分な報酬を得られるだろう。」
イシェは不安を感じながらも、テルヘルの言葉に引き込まれた。ラーンの熱意も、テルヘルの冷酷な決意も、彼女を前に進むように促した。
翌日、三人はビレーの郊外にある遺跡へと向かった。山道は険しく、空には不吉な雲が漂っていた。「制作」という言葉が頭の中に浮かんだイシェは、まるでこの遺跡が彼らの運命を決定づけるような予感がした。