「よし、ここだ！」ラーンの声がビレーの街並みを背に響いた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の指さす方向を見つめた。崩れかけた石造りの門が、雑草に覆われた道を隔てて立っていた。「また遺跡か…」と呟くと、彼女はため息をつきながら剣を構えた。
「ほら、イシェ！大穴は今日こそ発見できる気がするんだ！」ラーンの興奮を抑えきれない様子に、イシェは苦笑するしかなかった。いつも通り、彼の口から溢れる言葉は夢物語で、現実と乖離している。だが、彼の熱意にはどこか引かれるものがあり、イシェ自身もこの遺跡探索に心を躍らせ始めていたのかもしれない。
「よし、テルヘルさん、準備はいいか？」ラーンが振り返り、鋭い視線でテルヘルを見据えた。彼女は淡々とした口調で、「了解」とだけ答える。彼女の表情はいつも冷静沈着で、その奥底にある複雑な感情を読み取ることは困難だった。
遺跡の内部は暗く、湿った空気が漂っていた。朽ちかけた石畳の上を慎重に踏みしめながら、3人は奥へ進んでいった。ラーンの冒険心、イシェの慎重さ、テルヘルの冷徹さ、それぞれの個性が見事に調和しているかのような、奇妙な一体感があった。
「ここだ！」ラーンが突然叫んだ。彼の指先が示すのは、壁に描かれた複雑な模様だった。「古代の地図だ！これに従えば、大穴への道が開けるはずだ！」
イシェは地図を注意深く観察する。確かに、そこには未知なる場所に続く道筋が記されていた。しかし、その道は険しく、多くの危険が潜んでいる可能性もあった。
「行きましょう！大穴が待っている！」ラーンの興奮は抑えきれないものだった。イシェは彼の熱意に押されながらも、どこか不安な気持ちを抱えていた。テルヘルは地図を冷静に分析し、自身の目的を達成するための糸口を探っていた。
3人は遺跡の奥深くへと進み、未知なる世界への一歩を踏み出した。彼らは「到達」を目指して、それぞれの思いを胸に秘めていた。