ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑い声を上げながら酒を飲んでいた。イシェは眉間にしわを寄せ、彼の隣で静かに杯を傾けていた。
「あの遺跡の奥深くには、きっと金貨の山があるんだ! 昔、王族が隠した財宝だと聞いたことがあるんだ!」
ラーンがそう叫ぶと、イシェはため息をついた。「またそんな話か。今まで何十個も遺跡を探検してきたけど、そんな財宝は一度も見つからなかったじゃないか」。
「だからって諦めるもんじゃないだろう! 次こそは必ず見つける!」
ラーンの熱意にイシェは苦笑した。ラーンには、いつまでも子供のようないい加減なところがある。だが、その無邪気さに惹かれる部分もある。
その時、扉が開き、テルヘルが入ってきた。彼女の鋭い眼光が二人を捉え、静かな威圧感をもたらした。「準備はいいか? 次の遺跡に向かうぞ」。
イシェは小さく頷き、ラーンも杯を空け、立ち上がった。テルヘルに雇われて遺跡を探検している三人は、いつも以上に緊張を感じていた。それは、テルヘルの態度がどこか硬く、いつもより言葉数が少なかったからである。
遺跡の入り口は、崩れかけた石造りの階段だった。ラーンが先頭を切って降り始めると、イシェとテルヘルも続いた。薄暗い通路を進むにつれて、空気が重くなり、不気味な静寂に包まれた。
しばらく歩くと、壁一面に奇妙な模様が刻まれていた。イシェは近づいてよく見ると、それは複雑な文字で書かれた古代の言語であることに気づき、心の中で「これは...」と呟いた。
その時、ラーンが突然叫んだ。「おい、イシェ! 見ろ!」
彼は壁にある模様を指さしていた。イシェが目を凝らすと、模様の一部がわずかに光り輝いているのに気がついた。それはまるで、何かが隠されているかのような印象だった。
「これは...判読できるかもしれない」。イシェは緊張しながら言った。古代の文字に精通した学者も、この遺跡の謎を解明しようとしてきたが、誰も成功することはなかった。もしこれが真に判読できれば、この遺跡の秘密、そしてテルヘルの目的にも迫ることができるかもしれない。
「よし、やってみるか」。イシェは慎重に模様をなぞりながら、古代文字の知識を頼りにゆっくりと読み解いていった。彼の額には汗が滲み、緊張感が高まっていた。