ラーンが石の破片を投げ捨てた。
「また空っぽかよ。イシェ、お前、地図ちゃんと確認したのか?」
イシェは眉間に皺を寄せながら、古びた羊皮紙を広げた。「あの、西側の通路から入ったはずだけど…」
「いつも通り迷子かい?俺達、この遺跡何時間も探してるぞ!」
ラーンの怒りが沸点に近づく中、テルヘルが静かに口を開いた。
「落ち着きなさい、ラーン。焦ればミスが増えるだけだ。イシェ、もう一度確認する。あの記号は何を表す?」
イシェは地図を指さし、「ここには…『聖域』と記されているはずだが…」と呟いた。
テルヘルは鋭い視線で遺跡の壁に目をやった。「聖域か。だとすれば、何かが隠されている可能性が高い。」
彼女の言葉にラーンの顔色が変わった。彼は興奮を抑えきれずに、剣を握りしめながら言った。「よし!俺が先頭に立って開くぞ!」
しかし、イシェはラーンを制止した。「待てよ、ラーン。ここは聖域だとしたら、安易に踏み入るのは危険だぞ。」
「大丈夫だって!俺に任せてろ!」
ラーンの言葉が響き渡る中、遺跡の奥深くから不気味な音が聞こえた。それはまるで、獣の唸り声のようでもあり、人の悲鳴のようでもある。
イシェは顔面蒼白になり、テルヘルも眉をひそめた。「これは…何か悪い予感がする。」
ラーンは恐怖を感じながらも、一歩も引かなかった。彼は剣を高く掲げ、遺跡の奥へ進んでいった。
「俺が先駆けて道を開く!お前らについてこい!」
しかし、その先に待ち受けていたのは、想像を絶する光景だった。そこには、かつての人々が受ける残酷な刑罰の痕跡が残されていたのだ。壁に刻まれた血文字、床に散らばる骨、そして空中に漂う死の匂い。
ラーンは言葉を失い、剣が彼の手にしっかりと握られていることに気がついた。イシェは恐怖で目を閉じ、テルヘルは冷静に状況を分析していた。
「これは…ヴォルダンが仕組んだものか…」
テルヘルの呟きが、遺跡の静寂を打ち破った。ラーンの心には、深い怒りと憎しみが渦巻いていた。彼はこの遺跡から、そしてヴォルダンから全てを奪い返すことを誓った。