ビレーの夕暮れは早く、茜色の光が山の稜線に影を落とし始める頃には街は薄暗がりになった。ラーンは酒場でイシェと向かい合って座り、空になったタンブラーをテーブルに置いた。
「今日はいい収穫だったな」
ラーンの顔は汗で輝き、少しばかり誇らしげだ。イシェは眉間にしわを寄せて、ラーンの言葉を冷静に見つめた。
「収穫?あの謎の装置が何なのかも分からず、ましてや売れるものかどうかも分からない。ラーン、また大穴を見つけたと思ったら大 disappointment だよ」
ラーンは苦笑しながら、「そんなこと言わないでくれよ、イシェ。今日はいつもよりいい金額を払ってくれただろ?テルヘルさんも満足そうだったし」
イシェは視線をそらした。「テルヘルさんはいつもそうだけど、あの人の真意が分からないんだ」
「まぁ、気にしなけりゃいいんだよ。俺たちの仕事は遺跡を探して遺物を持ち帰るだけだ。それ以上のことは考えなくていい」
ラーンの言葉にイシェは何も言わず、静かに酒を飲み干した。外では秋の風が吹き始め、木々の葉がざわめき始めた。
「ところで、イシェ、次の目標はどこにするか決めたか?」
「まだだな。テルヘルさんから新たな依頼が入るまで待つしかないだろう」
ラーンは立ち上がり、テーブルに置かれた小銭袋を手に取った。「よし、今日はこれで終わりだ。明日もまた遺跡を探そうぜ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンの背後に続く。街の灯りが一つ二つと点り始め、秋の夜がゆっくりと深まっていく。
翌朝、ビレーの住民たちは収穫祭の準備で賑わっていた。近くの農場では小麦の刈り入れも終わり、黄金色の穂を束ねたものが風に揺れている。イシェはそんな風景を見ながら、ラーンの言葉が頭をよぎった。
「大穴を掘り当てる」。
イシェは自分が本当にそう思っているのか、少しの間立ち止まって考えることにした。