日差しが容赦なく照りつける砂漠の遺跡。ラーンは熱気にうだるように喉を潤した。イシェが眉間にしわを寄せ、地図を広げている。「ここだな、テルヘルが指定した場所は。」イシェの声は乾いた風のように荒く響いた。「奥にある崩れた塔だそうだ。」ラーンの視線の先には、崩れかけた石の壁が青空に聳えていた。
「よし、行こう！」ラーンは剣を手に取り、イシェに声をかけた。テルヘルはすでに塔の中へと進んでいて、その背中は凛と立っていた。イシェはため息をつきながら、ラーンの後を追った。
遺跡の内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。足音だけが響く静寂の中で、3人は慎重に進んでいった。崩れた石や朽ち果てた柱の間を縫うように進むと、奥には広間があった。中央には巨大な石棺が置かれており、テルヘルはすでにその前に立っていた。
「ここだ。」テルヘルは低く言った。「ヴォルダンが奪った私の大切なもの。ここに眠っていると確信している。」彼女の目は燃えるような光を放ち、握りしめた拳からは震えが伝わってきた。ラーンとイシェは互いに顔を合わせ、何かを察知したようだ。
テルヘルが石棺に手をかけようとした時、地面が激しく揺れた。崩れかけた天井から埃が降り注ぎ、壁の亀裂が広がっていく。
「これは…！」イシェの声が震えた。「遺跡が崩壊するぞ！」
ラーンは慌ててテルヘルを引っ張り出した。「逃げろ！」
3人は石棺に背を向け、崩れてくる遺跡から逃げるように走り出した。後ろから轟音と共に石と瓦礫が飛んでくる。
「早く！」テルヘルが叫んだ。「あの出口を目指せ！」
ラーンはイシェの手を引き、必死に走った。出口まであと少しという時、突然、足元が崩れ、ラーンは転げ落ちた。
「ラーン！」イシェが振り返り、叫んだ。
だが、ラーンの姿はもう見えなかった。埃が渦巻く中、イシェは恐怖と絶望に襲われた。
その時、ラーンは瓦礫の下から這い上がった。「大丈夫だ、イシェ！生きてるぞ。」彼は咳き込みながら言った。
イシェは安堵のあまり涙を流した。「よかった…本当に…」
3人は手を取り合い、崩れ落ちる遺跡から脱出した。外の世界では夕焼けが空を赤く染めていた。
テルヘルは息を切らしながら言った。「あの石棺には…私が切望していたものがあったはずだ。」
イシェは彼女の肩に手を置き、優しく言った。「大丈夫。まだ諦めないで。」
ラーンの視線は遠くの夕日に向けられた。彼が切望するものとは何なのか。それは誰にもわからない。しかし、彼は今日も明日も、遺跡を探索し続けるだろう。