ビレーの朝焼けが、ラーンの寝ぼけた目を刺した。イシェはすでに立ち上がり、粗末な食卓でパンを口にしていた。「今日はあの遺跡だな。テルヘルが言っていた、地下深くにあると…」。ラーンがまだ眠い目をこすっていると、イシェは続けた。「地図には描かれていない場所らしい。危険かも…」
ラーンの脳裏に、テルヘルの冷徹な表情が浮かんだ。彼女の目的は遺跡の遺物ではない。ヴォルダンへの復讐。そのために必要な情報、そして武器を遺跡から得ようとしているのだ。ラーンは自分がその道具に過ぎないと分かっていた。それでも、テルヘルと共にいることで、いつか「大穴」を見つけるかもしれないという希望が捨てきれない。
3人はビレーの喧騒を離れ、山道を登っていく。遺跡へ向かう道は険しく、切り立った崖や崩れやすい岩場が続く。「ここは以前、ヴォルダン軍に襲われた場所だ。生き残ったのはほんの一握り…」イシェの言葉が、ラーンの心を締め付ける。
遺跡の入り口は、巨大な石柱が崩れ落ちた隙間から見えた。薄暗い内部へ足を踏み入れると、そこは不気味な静寂に包まれていた。ラーンの足音だけが、空気を切り裂くように響いていた。「ここからは私達だけで進むんだ」テルヘルが言った。彼女の鋭い視線は、まるでラーンとイシェを貫き通すようだった。
遺跡内部は迷路のように複雑で、壁には古代文字が刻まれていた。イシェは慎重に地図を広げ、進路を確認していた。「ここは以前、ヴォルダン軍に襲われた場所だ。生き残ったのはほんの一握り…」イシェの言葉が、ラーンの心を締め付ける。
彼らは深い地下へと降りていくにつれて、空気が重く淀んでいった。まるで何かが彼らの存在を認識し、じっと見つめているような感覚だった。そしてついに、巨大な石扉の前にたどり着いた。「ここがテルヘルの目的だ」イシェが言った。「この扉の向こうに、ヴォルダンを滅ぼす力があるらしい…」
ラーンは扉の手前にある奇妙な装置を見て、背筋がぞっとした。それは複雑に絡み合った金属の枝で構成され、まるで生きた生物のようだった。テルヘルは装置に手を触れ、何かを唱えた。すると、装置から青白い光が放たれ、石扉に刻まれた文字が輝き始めた。「さあ、開けろ…」
扉が開かれると、そこには広大な空間が広がっていた。中央には、巨大な水晶体が浮かんでおり、その周りを何百もの機械が回転していた。それはまるで、古代文明の心臓部のような光景だった。しかし、ラーンの目に映ったのは、水晶体から発せられる不気味な光と、機械の動きに感じられる異常なまでの精密さだった。
「これは…」イシェの声が震えていた。「これはヴォルダンが欲しがっていたもの…」。テルヘルは水晶体に向かって歩み寄り、「これで終わりだ、ヴォルダン。お前を滅ぼす時が来た!」と叫んだ。しかし、その瞬間、水晶体が発光し、激しい衝撃波が周囲に広がった。
ラーンは意識を失う直前、イシェの悲鳴と、テルヘルの絶望的な叫び声を聞いた。「ラーン!」「ああ…」