「おい、イシェ、あの石の切れ端見てみろよ。」
ラーンが興奮気味にイシェに石を見せつけた。薄暗い遺跡の中、焚き火の光が石に反射して小さくきらめいている。
「ただの石じゃないか。また宝探しの妄想が始まったのか？」イシェは眉をひそめた。いつも通りのラーンの行動だ。だが、彼の目は輝いていた。
「いや、違うんだ。この切れ端、見てみろ。この模様…」
ラーンは指で石の表面をなぞった。確かに、複雑な模様が刻まれていた。イシェも興味を持った。
「これは…古代文字か？」
イシェはかつて遺跡で発見された断片的な文献を思い浮かべた。その文献には、失われた文明の知識が記されていたという。
「そうかもな！もしこれが真に古代文字なら、とんでもないものを見つけ出したことになるぞ！」
ラーンの目はさらに輝きを増した。だが、イシェは冷静さを保った。「でも、ただの切れ端だよ。文字の意味もわからないし、何の役に立つんだ？」
「役に立つって…いや、確かに今はそうかもしれない。」ラーンは少しだけ顔を曇らせたが、すぐに笑顔を取り戻した。「でも、この切れ端が何かを示しているに違いない！きっと、あの伝説の遺跡へ繋がる鍵になるはずだ！」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格は、時にイシェを不安にさせた。だが、彼の熱意には心を動かされることもあった。
「わかった、わかった。とりあえず、この切れ端を調べてみようか。」
イシェは小さな革袋からメモ帳を取り出した。「もしかしたら、あの学者に相談する価値もあるかもな…」
ラーンが興奮して石を握りしめると、テルヘルが冷ややかな視線で彼らを見下ろした。
「宝探しの妄想に夢中になっているようだな。忘れるな、我々の目的は復讐だ。」
テルヘルの言葉に、ラーンの目は少しだけ曇ったが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「ああ、もちろん。復讐のためにも、この切れ端から何か見つけ出せるといいな！」
彼は再び石を握りしめ、遺跡の奥へと進んでいった。イシェはテルヘルに視線を向け、小さく頷いた。
「彼が言うように、もしかしたら…」
イシェは自分の言葉に確信が持てなかった。だが、この切れ端が彼らの運命を変える何かを示しているような気がした。