「よし、今回はあの崩れた塔だ！」ラーンの目は輝いていた。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を広げた。「また危険な場所を選んだじゃないの？あの塔は崩落した部分が多いって聞いたわよ。」
「大丈夫だって！俺が先頭を切って開けばいいんだろ？」ラーンは剣を構え、胸を張った。イシェはため息をつきながら、テルヘルに目を向けた。「どうするつもりですか？」
テルヘルは冷静な表情で言った。「塔の中央部にあるとされる古代の宝庫を目指しましょう。分配計画も事前に立てておく必要があります。」
ラーンの顔色が変わった。「おいおい、またそんな細かいこと？宝を手に入れたらその場で分けちゃえばいいんだろ？」
「そんな単純な話ではないわ。今回は危険が伴う場所だ。各々が持ち帰るべき物を明確にしておく必要がある」イシェは冷静に説明した。
テルヘルは頷き、地図を広げ始めた。「宝の分配については、ラーン君には戦闘能力が高い点を考慮し、6割を、イシェさんは探索と判断力に優れているため、3割を、私自身は情報収集と交渉に関わっているので残りの1割を…といった具合に考えています。」
ラーンの顔は真っ青になった。「え？なんで俺が一番少ないんだ！俺が最初に飛び込んで危険を冒してるだろ！」
「落ち着いてください。分配の割合はあくまで目安です。もし宝の中に価値の高いものがあれば、再交渉することもできます」テルヘルは冷静に言った。
イシェはラーンを制止するように手を挙げた。「落ち着きましょう、ラーン。テルヘルの言う通り、危険度や貢献度に応じて分配されるのは当然のことだ。」
ラーンの怒りは冷めやらなかったが、イシェの言葉とテルヘルの冷たい視線に、渋々納得した。
崩れた塔の入り口に立ち、ラーンは剣を握りしめながら言った。「よし、行こう！大穴を見つけるぞ！」
イシェは深呼吸をして、後ろから続くテルヘルに声をかけた。「準備はいい？ 」テルヘルは小さく頷き、3人は塔へと足を踏み入れた。