「よし、今日はあの崩れかけた塔だな！」ラーンの豪快な声は、ビレーの朝の静けさに反して響き渡った。イシェはいつものように眉間に皺を寄せ、「またあの塔？あれは危険すぎるんじゃないのか？」と不安げに言った。
「大丈夫だ、大丈夫！俺が先導するから」とラーンは自信満々に答えるが、その瞳には少しばかりの迷いが宿っていた。最近、遺跡探索で得られる報酬は日増しに少なくなり、生活費を稼ぐのがやっとになっていたからだ。
そこに、黒装束のテルヘルが現れた。「準備は良いか？」彼女の鋭い視線はラーンとイシェを貫き通す。「今日は大きな成果を得るだろう」と彼女は冷たく言った。
崩れかけた塔の内部は暗く湿っていた。石畳はところどころ欠け、天井からは埃が降り積もっている。「ここなら何か見つかるかもしれない」とラーンの目は輝いていた。しかしイシェは不安を募らせる。「この塔は以前にも探索したけど、何も見つからなかったはず…」
テルヘルは不気味なほど冷静に周囲を観察していた。彼女の視線は壁のひび割れに止まった。「ここだ」彼女は言い放ち、小さなハンマーを取り出した。数回叩くと、壁の一部が崩れ落ちた。そこには、複雑に絡み合った金属製の装置があった。
「これは…！」イシェは息を呑んだ。「古代文明の遺物か…」ラーンは興奮気味に言った。テルヘルは冷静に装置を観察し始めた。「分解すれば、その機能が解明できるかもしれない…」
だがその時、装置から奇妙な光が放たれ、塔全体を包み込んだ。ラーンの叫びが響き渡り、イシェは恐怖で目を閉じた。そして、全てが静寂に包まれた。