「よし、今回はあの洞窟だ!」ラーンが目を輝かせ、地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せていた。「またしても危険な場所かい? ラーン、あの洞窟には以前から噂があっただろう。迷宮構造で、しかも分流だらけだ。地図も不完全だし、俺たちは…」
「大丈夫だ、イシェ! わかったらわかるだろ?」ラーンはニヤリと笑った。「ほら、テルヘルさんもいるじゃないか! 彼女が案内してくれるって言うんだぞ」
テルヘルは薄暗い tavern の隅で一杯の酒を傾けていた。彼女の鋭い視線は遠くを見据えていた。「準備はいいか? 今日の仕事は簡単だ。洞窟の奥深くにある遺物を見つけ出すだけだ」
イシェはテルヘルの言葉に少し安堵した。だが、心のどこかで不安な気持ちは拭いきれなかった。「分流だらけだと、迷子になるんじゃないだろうか…」と呟くと、ラーンは彼を元気づけるように肩を叩いた。
洞窟の入り口は狭く、湿った冷気を感じさせた。彼らは懐中電灯の光を頼りに慎重に進んでいった。しかし、進むにつれて道は複雑になっていき、分岐路が次々と現れた。「これは…」イシェは地図を確認しながら不安げに言った。「分流が多すぎる… どれが正しいルートなのかわからない」
ラーンはイシェの言葉を無視して、意気揚々と奥へと進んでいった。「大丈夫だ! 何か面白いものが見つかるぞ!」
テルヘルは静かに後を追った。彼女の目は鋭く洞窟の奥深くを伺っていた。彼女は何かを探していたようだった。
やがて、彼らは分岐路に迷い込んだ。幾つかの道が複雑に交錯し、どれを選べばいいか分からなくなっていた。「ここだ!」ラーンは行き止まりになっている通路の先を指差した。「この奥に遺物があるはずだ!」
イシェは不安を感じながらラーンの後を追った。しかし、その先には何もなかった。ただ、壁に奇妙な模様が刻まれていただけだった。「これは…」イシェは模様をよく見ると、息を呑んだ。それは、彼らが探していた遺物の象徴だったのだ。
「ここが分流の終着点だ… この模様を起点にすれば、本来の遺物の場所を見つけられるはずだ」テルヘルは冷静に言った。「ラーン、お前が迷子になっても仕方がない」
ラーンの顔色が変わった。「どういうことだ?」
テルヘルは冷たい視線をラーンに向けた。「お前は重要な役割を果たすためにここに来たのだ。分流を迷い歩くことで、本来の遺物の場所を隠すための犠牲になるのだ」
イシェは驚きと怒りで言葉を失った。ラーンの顔には恐怖の色が広がっていた。
「何をするつもりだ!」ラーンが叫んだ。「俺を利用するつもりか!?」