「おい、イシェ、何か変だな」。ラーンが眉間に皺を寄せ、遺跡の奥深くへ続く通路をじっと見つめた。「いつもと雰囲気が違う気がする」。イシェは彼の背後から慎重に近づき、ラーンの視線にしたがい通路を確かめた。薄暗い通路は、いつもなら湿った土と石の匂いが充満していたが、今日はどこか金属的な臭いが混じるように感じられた。
「確かに…何か不自然だ」。イシェは小さく頷いた。「でも、具体的に何が違うのか…」
二人は互いの視線を交わし、無言で意思疎通を図った。ラーンはいつも通り、直感で行動することを好むタイプだが、イシェは慎重に状況を分析してから動くタイプだ。今回はイシェの分析が必要な状況だった。
その時、通路の奥からかすかな音が聞こえてきた。金属同士がぶつかり合うような鋭い音だ。ラーンの瞳孔が一瞬広がり、剣の手元に手をかけた。「敵か?」「待て」イシェはラーンを制止し、耳を澄ました。「あの音…何か違う」。
イシェの分析は的中した。音が聞こえてきた方向から、突然、光が放たれた。それは武器ではなく、複雑な機械仕掛けのようだった。その光は壁に反射し、通路全体を一瞬にして照らし出した。
「これは…」ラーンの口から思わず声が漏れた。光が消えた後、彼らが目にした光景は、今まで見たこともないものだった。通路の壁には、複雑な記号と図形が刻まれており、それはまるで巨大な装置の一部のように見えた。
イシェは冷静さを保ちながら、壁に刻まれた記号を一つ一つ丁寧に分析し始めた。「これは…古代文明のものだ」。彼女の目は驚きに満ちていた。「そして、この遺跡は単なる墓所ではなく、何か別の目的で造られたものなのかもしれない…」
ラーンの好奇心とイシェの分析力は、新たな謎へと彼らを誘うことになった。そして、その背後には、ヴォルダンの影が忍び寄っていた。