ラーンの大斧が遺跡の壁を粉砕し、埃が舞う中、イシェは薄暗い通路を慎重に照らし出した。
「ここには何があるんだ…」
イシェが呟くと、ラーンはニヤリと笑った。
「ほら、言っただろう？必ず大穴が見つかるって！」
イシェは眉間に皺を寄せた。ラーンの楽観的な態度はいつも通りだった。だが、今回は違う気がした。この遺跡は他のものとは異なり、不気味な静けさに包まれていたのだ。
「でも、何か変だ…」
イシェの言葉にラーンは少しだけ顔を曇らせたが、すぐにいつもの笑顔を取り戻す。
「大丈夫だ。俺たちにはテルヘルがいるじゃないか。彼女なら何でも知ってるさ」
テルヘルは、彼らの後ろを少し離れた位置で、鋭い目を遺跡の壁に注いでいた。
「この遺跡はヴォルダンと関係がある可能性が高い。慎重に進もう。」
彼女の言葉は重く響き渡った。ヴォルダンといえば、エンノル連合にとって脅威の大国だ。テルヘルはヴォルダンのために大切なものを奪われた過去があり、復讐心を燃やしているのだ。
遺跡の奥深くへと進むにつれ、彼らは奇妙な装置を発見する。それは複雑に絡み合った金属製の歯車と水晶で構成されており、不気味な光を放っていた。
「これは…」
イシェは言葉を失った。ラーンは興味津々に装置を触ろうとしたが、テルヘルが制止した。
「触るな！危険だ！」
テルヘルは装置に刻まれた古代文字を解読し始めた。
「これは…ヴォルダンが秘かに研究していた強力なエネルギー源の可能性がある…」
彼女の声にラーンの表情が硬くなった。大穴を見つけることよりも、ヴォルダンの野望を阻止することの方が重要だと悟ったのだ。
「では、どうするんだ？」
イシェが尋ねると、テルヘルは深呼吸をして言った。
「この装置を破壊し、ヴォルダンに渡さないようにする。だが、その前に…」
彼女はラーンとイシェの目をじっと見つめた。
「この装置の研究データは、エンノル連合に渡す。そして、俺たちの報酬として…」
テルヘルは少しだけ微笑んだ。
「大穴を分け合うのだ。」