「準備はいいか？」
ラーンの粗い声は、薄暗い遺跡の入り口に響き渡った。イシェは小さなランプを手に、後ろ髪を気にしながら頷いた。テルヘルは背中に剣を負い、鋭い視線で周囲を見回していた。
「今回は念入りに調査するんだ。あの遺物が見つかった場所から北東の方向だ」
テルヘルの言葉にラーンが不機嫌そうに鼻をひくった。「またあの話か？いつになったら俺たちにその分け前を見せてくれるんだ？」
「落ち着け、ラーン。今回は大物だ。見つけたら分け前もたっぷりもらえる」
イシェはラーンの肩を軽く叩き、テルヘルに視線を送った。テルヘルの表情は硬く、少しだけ口角が上がった。
「準備ができたら入るぞ」
３人は遺跡の入り口へと足を踏み入れた。石畳が敷かれた通路は湿っていて、カビ臭い空気が鼻をついた。ラーンは先頭を歩き、イシェが後に続く。テルヘルは二人に少し遅れて、常に周囲を警戒しながら進んだ。
「あの遺物について、テルヘルは本当のことを言っているのか？」
イシェは小声でラーンに尋ねた。ラーンの表情は曇り、しばらく沈黙してから答えた。
「知らねえよ。でも、あいつの目は本物だ。あの目で見つめられたら、俺には嘘をつけないって気がする」
イシェは深く頷き、視線を前方へと戻した。通路は次第に狭くなり、天井からは岩が垂れ下がっていた。緊張感が高まる中、ラーンが突然立ち止まった。
「何かいる」
彼は剣を構え、周囲を見回した。イシェも緊張してランプを高く持ち上げ、影が揺れる壁を警戒した。テルヘルは静かに歩み寄り、剣を抜きながら言った。
「何だ？」
その時、通路の奥から低い唸り声と共に巨大な影が現れた。ラーンとイシェは驚愕の声をあげた。影はゆっくりと近づき、その姿が明らかになった。それは巨大な獣の姿で、鋭い牙と爪を持ち、赤い光を放つ目を持つ恐ろしい怪物だった。
「これは…！」
ラーンの言葉は途絶えた。イシェは恐怖で震え、テルヘルは冷静に剣を構えた。
「逃げるな！俺たちが倒すぞ！」
ラーンが叫び、獣に向かって突進した。イシェはラーンの後を追うように立ち上がり、テルヘルは二人をサポートしながら戦いを開始した。激しい戦いが始まる。三人は力を合わせて獣に立ち向かうが、その力は圧倒的だった。
「ラーン！イシェ！逃げろ！」
テルヘルの叫び声が響き渡った。ラーンは獣の攻撃を受け、吹き飛ばされた。イシェは絶望的な表情でラーンを見つめた。その時、テルヘルが獣の背後から急襲し、剣を深く突き刺した。獣は悲鳴を上げ、崩れ落ちた。
「…終わったか？」
イシェは震える声で言った。ラーンは立ち上がり、傷だらけの体を押さえて苦笑いした。
「ああ、終わったようだ…」
三人は互いに顔を見合わせ、息を切らした。激しい戦いの後、遺跡の静けさはより深く感じられた。