「よし、今日はここだ!」ラーンが目を輝かせ、古い地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せながら地図を指さした。「またしても危険な場所じゃないか? ラーン、あの遺跡は崩落の噂があるぞ。」
ラーンの頬に赤い潮が巡った。「大丈夫だ、イシェ。今回はテルヘルも一緒だぞ! 彼女が言うには、その遺跡には貴重な遺物があるらしいんだ。大穴が見つかるかもしれない!」
「大穴…」イシェはため息をついた。ラーンの夢である「大穴」とは、かつて伝説の英雄が埋蔵したとされる莫大な財宝のことだった。イシェは現実的な性格で、そんな夢を軽視するわけではなかったが、ラーンの無謀さと楽観主義にいつも振り回されていた。
テルヘルは冷静な表情で地図を眺めていた。「この遺跡にはヴォルダン軍が関与している可能性が高い。我々は慎重に進まなければ。」彼女の目は鋭く光り、復讐への執念がそこに見え隠れしていた。
三人はビレーを出発し、険しい山道を登り始めた。ラーンの陽気な歌声が響き渡る中、イシェはテルヘルの過去を考え続けた。ヴォルダンに全てを奪われたという彼女の言葉は、どこか悲しみを帯びていた。イシェは自分が持つ「分かち合い」の精神とは違う、異なる価値観を持つ者同士でも、力を合わせて目標に向かって進むことができるのかもしれないと、わずかに希望を感じた。
遺跡の入り口には、崩落した石が積み重なっていた。ラーンが軽々と石をどけると、奥深く暗い通路が現れた。「よし、準備はいいか?」
イシェは小さく頷き、テルヘルは剣を構えた。三人は息を潜めて遺跡内部へ足を踏み入れた。