「よし、ここだ！」ラーンの声がビレーの狭い路地裏にこだました。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の指さす方向を見る。そこには、錆びついた鉄格子で塞がれた古井戸があった。「またか…」「いいから、手伝ってくれよ！今日は俺が運がいい気がするんだ」ラーンは興奮気味に井戸の蓋をこじ開け始めた。イシェはため息をつきながら、彼に続く。
「この井戸、一体何なんだ？」イシェは懐中電灯を井戸の中に差し込んだ。「何か…光ってるぞ！」ラーンの声が響き渡る。イシェも覗き込むと、井戸の奥底からかすかに青い光が漏れているのが見えた。「もしかして…遺跡につながるのか？」
「よし、俺が先に降りる」ラーンは井戸の縁に腰掛けて、慎重に下へ降り始めた。イシェは後ろから続くようにロープを彼に渡した。「気をつけろよ！何かあったらすぐに声をかけろ！」
井戸の中は湿気とカビ臭い匂いが充満していた。ラーンの足音だけが響き渡る。しばらくして、彼の声が聞こえた。「イシェ、ここだ！」イシェが降りていくと、ラーンは小さな石室の前に立っていた。壁には複雑な模様が刻まれており、その中心には青い光を発する水晶が埋め込まれていた。「すごい…こんなものが…」イシェは目を丸くした。
その時、突然、石室の床が崩れ落ちた。ラーンは悲鳴を上げて下に落ちていった。「ラーン！」イシェは叫んだが、彼の声は石室にこだましていただけだった。イシェは必死に崩れた床の隙間をのぞき込んだ。ラーンの姿は見えない。ただ、赤い光がかすかに見えた気がした。
「ラーン！」イシェの声が震えていた。「大丈夫か？」しかし返事はなかった。イシェは恐怖と焦燥感に駆られ、崩れた床を必死にこじ開け始めた。
そして、ついにラーンの姿が見えた。彼は血まみれで倒れており、意識を失っていた。イシェは駆け寄って彼を抱き上げた。「ラーン！大丈夫か？」しかし、ラーンの顔からは赤い血がゆっくりと流れ出ていた。