「今日はいい感じの場所らしいぞ」ラーンは興奮気味に地図を広げた。イシェは眉間に皺を寄せながら、彼の肩越しに地図を覗き込んだ。
「また行き当たりばったりか?」
「いやいや、今回は違うんだ。テルヘルが言うには、この遺跡はヴォルダン軍に占領されたらしい。つまり、まだ誰も探索してないと!」
ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をついた。ラーンが言うように、未開の遺跡なら貴重な遺物や資源が眠っている可能性がある。しかし、ヴォルダン軍の残骸が残されているということは、危険も伴うことは明らかだった。
「テルヘルはどう考えているんだ?」
「彼女は、遺跡の奥に何か重要なものがあると信じて疑っていないよ。それに、ヴォルダンへの復讐を果たすための手がかりになるかもしれないとも」
イシェはラーンの言葉を聞いて、少しだけ心がざわついた。テルヘルの目的は彼女自身のものだが、ヴォルダンの残虐さを考えると、イシェもどこかで復讐心を抱いていた。
「よし、準備だ!」ラーンは軽快に立ち上がった。イシェは彼の手を掴んで引き止めた。
「待てよ、ラーン。今回は慎重にやろう。危険な場所だと分かっているだろう?」
ラーンの表情が少し曇った。「わかってるよ、イシェ。でも、僕らは冒険者だ。危険と隣り合わせでこそ、興奮するんだよ!」彼はそう言って、イシェの手を振りほどき、ビレーの街を出立していった。