ラーンが「大穴」を見つける夢を語るいつもの tavern で、イシェは眉間に皺を寄せた。「そんな話、いつまで続けるんだい？ いつも遺跡から持ち帰る物なんて、錆びた剣か割れた壺じゃないか」。
ラーンの笑い声が、騒々しい酒場の喧騒に溶け込んだ。「お前が言うな！ さっきの壺、いい値段で売れただろう？ 3日分の酒と食料が手に入ったぞ！」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格は、彼の魅力の一つだが、イシェにとっては時に頭を悩ませる存在だった。
その時、扉が開き、黒ずんだマントを羽織った女性が入ってきた。テルヘルだ。彼女は鋭い視線で tavern の客たちを一人ひとり見渡した。ラーンの隣に座り、「準備はいいか？」と低い声で問いかける。
「ああ、もちろん」ラーンがニヤリと笑う。「今日は、大穴が見つかる気がするんだ！」
イシェはテルヘルの目つきに何かを感じた。いつもより冷酷で、どこか不穏な雰囲気が漂っていた。彼女はヴォルダンへの復讐を誓う女性だ。その復讐の目的のためなら手段を選ばないだろう。イシェは不安を覚えつつも、テルヘルの後ろに隠された何かを感じ取ることができた。それは、単なる遺跡探検ではない、何か大きな陰謀の一部ではないかという予感だった。
「よし、行こう」テルヘルが立ち上がり、 tavern を後にした。ラーンとイシェも後を追う。三人は夕暮れの街を抜け、遺跡へと続く道を歩み始めた。
彼らの足取りは、沈黙に包まれ、かつてないほどの緊張感に満ちていた。
テルヘルは振り返り、「あの遺跡には何かがある」とつぶやいた。「そして、それを手に入れるためには、お前たちが必要なんだ」。
イシェはラーンの顔色を伺った。彼の瞳には、いつもの無邪気さはなく、どこか不気味な光が宿っていた。イシェは深く息を吸い、不安を抱えたまま遺跡へと続く道を歩み始めた。彼らの運命は、この遺跡探検から大きく変わっていくことを、誰も知らなかった。