「よし、今回はあの崩れた塔だ。噂では地下に何かあるってな」
ラーンがそう言うと、イシェは眉間にしわを寄せた。
「またそんな話? ラーン、あの塔は危険だって言っただろう。それに、遺跡調査許可も下りてないぞ」
「気にすんな! 許可なんて、俺たちの力を見せてしまえばどうにかなるさ!」
ラーンの豪快な笑みにイシェはため息をついた。彼とは幼馴染だが、いつも彼の無茶な行動に振り回される。
そんな時、背後から声がした。
「二人とも、準備はいいか?」
テルヘルが鋭い目で二人を見下ろす。彼女の冷たい視線にラーンは少しだけ萎縮した様子を見せた。イシェはテルヘルに報告書を差し出した。
「塔の内部構造図と、周辺の環境分析です。危険区域もマーキングしています」
テルヘルは報告書を受け取り、無表情で読み始めた。
「よし、わかった。ラーン、お前は入口付近を警戒しろ。イシェ、お前は俺と共に地下へと降りる。何かあったらすぐに合図だ」
二人は頷き、準備を整えた。
塔の内部は暗く湿っていた。崩れた石や朽ち果てた家具が散乱し、不気味な静寂に包まれていた。ラーンは緊張した表情で周囲を警戒しながら、イシェとテルヘルは慎重に地下へと進んでいった。
「ここだ」
テルヘルが壁の一面に手を当てると、壁の一部がゆっくりと開いていく。その奥には階段が続いていた。
「この階段は以前から存在していたわけではないようだ。誰かが最近作ったものだと推測される」
イシェがそう言うと、テルヘルは頷いた。
「つまり、誰か先にここへ入ってきたということだ。そして、何かを発見したのかもしれない」
彼女の目は鋭く輝いていた。
階段を降りると、そこは広大な地下空間だった。中央には巨大な石棺が置かれており、その周りを何体もの骨格が取り囲んでいた。
「これは…」
イシェの声は震えていた。
「ここはかつての王の墓だ」
テルヘルがそう言うと、ラーンが驚きの声を上げた。
「王の墓? それなら、宝が埋まってるかも!」
ラーンは興奮した様子で石棺に近づこうとしたが、テルヘルが彼を制止した。
「待て、ラーン。まずは警戒だ。この墓には何か危険な罠があるかもしれない」
テルヘルがそう言うと、イシェも頷いた。
「確かに、ここは不気味すぎる。何かがおかしい」
その時、石棺の上から黒い煙が立ち上がり始めた。煙はみるみるうちに広がり、部屋全体を覆い尽くした。
ラーンが coughing しながら叫んだ。
「何だこれは!?」
煙の中に何かが蠢いているのが見えた。イシェは恐怖で体が凍りついた。
テルヘルは冷静に状況を判断し、剣を抜き出した。
「ラーン、イシェ、俺の指示に従え!」
彼女は煙の中から姿を現した巨大な怪物に向かって歩み寄った。