ラーンの重い斧が岩盤を叩き割る音だけが、静寂な遺跡の内部に響いていた。汗だくになりながらイシェは壁にある奇妙な模様を指さした。
「ここにも…また同じ模様か。一体何の意味があるんだろう?」
イシェの声には疲れと諦めが滲んでいた。ラーンは大きなため息をつき、岩盤の奥深くを見つめた。
「そんなことより、まだ宝は見つからねぇのかい?テルヘルに言われたように、ここには何かあるはずだろ?」
ラーンの言葉にイシェは小さく頷いた。テルヘルが持ち出した古い地図には、この遺跡の奥深くにあるという「凹んだ場所」について記されていた。そこには、ヴォルダンを滅ぼす力があると噂される謎の遺物が眠っているというのだ。
だが、何時間も探索しても、見つけられるのは謎の模様と埃ばかりだった。イシェは疲れた体に重みを感じ、もうこの遺跡から出てしまいたいと思った。しかし、ラーンの熱意に触れる度に、諦めることができない自分がいた。
「よし、もう少しだ!必ず何かあるはずだ!」
ラーンがそう言うと、再び斧を振り上げた。イシェも深く息を吸い込み、彼に続くように動き出した。その時、イシェの足元にある石畳にひび割れが走ったことに気づいた。まるで何かが下に沈んでいくような、不気味な凹みだ。
「ラーン、ここを見て!」
イシェの声を聞いたラーンは、すぐに駆け寄ってきた。二人は顔を見合わせ、互いに頷き合った。もしかしたら、これがテルヘルが探す「凹んだ場所」なのかもしれない。彼らの冒険は、今まさに新たな局面を迎えることとなる。