ラーンの大剣が遺跡の奥深くへ轟く。石塵が舞い上がり、視界は一瞬白く染まった。イシェは咳き込みながら、「また無駄な攻撃だ。あの壁には何もないって何度も言ってるじゃないか！」と叱りつけた。
ラーンは苦笑しながら肩をすくめた。「だって、もしかしたら奥に何かあるかもしれないじゃん？ほら、大穴が見つかったら僕たち凱旋できるんだぞ！ビレーの英雄になって、イシェも一緒に豪華な家に住めるかも！」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格にはいつも呆れてしまう。だが、彼のその明るさにはどこか惹かれてしまうのも事実だった。
「大穴なんてそんな簡単に見つかるもんじゃないわよ。それに、この遺跡は危険すぎる。あの壁の奥には何かいる気がする」
その時、背後から冷たい声が響いた。「そうだな。お前たちにはまだ理解できないだろうが、この遺跡は眠れる神々の領域だ」
振り返ると、テルヘルが鋭い目で二人を見下ろしていた。彼女の視線はまるで氷のように冷たかった。
「神々…？」イシェは不安そうに呟いた。ラーンの顔も少し曇った。だが、テルヘルはすでに歩き始めていた。「さあ、行くぞ。あの壁を越えれば、真実が見えてくる」と、彼女は深淵なる遺跡の奥へ誘うように言った。