「よし、今日はあの崩れかけの塔だな」。ラーンが大きな声で言った。イシェは眉間にしわを寄せながら地図を広げた。「また危険な場所か？あの塔は地元の人々に避けられているぞ。何か悪い噂があるらしい」。
ラーンの顔に少しだけ曇りが見えたが、すぐにいつもの笑顔を取り戻した。「大丈夫だ、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるだろ？それに、噂なんて気にする必要はない。大穴が見つかるかもしれないんだ！」
テルヘルは地図を指さし、「塔の奥深くにある部屋には、ヴォルダンがかつて所有していたとされる遺物があるという情報が入手できた。それが真実なら、我々の目的達成に大きく前進できる」。彼女の目は鋭く光っていた。ラーンは興奮気味に頷き、イシェも諦めるように頷いた。
崩れかけた塔の内部は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。足元には石畳が崩れ落ち、天井からは石片が落ちてくる。緊張感が張り詰めていた。ラーンの後ろを歩いているテルヘルは、時折振り返り、周囲を確認する。
「何かいる気配だな...」ラーンが呟いた。イシェも剣を握り締め、警戒した。すると、奥の方から不気味な音が聞こえてきた。
「あの音は何だ...？」イシェが不安そうに言った。テルヘルは冷静に、「恐らく遺跡の番人だろう。注意深く進むように」。
彼らは慎重に進んでいくと、大きな部屋に出た。中央には石の祭壇があり、その上に奇妙な形の遺物があった。ラーンの目は輝き、イシェも緊張を隠せない様子だった。その時、背後から何かが襲いかかってきた。ラーンは素早く剣を抜いて振り回し、敵を倒した。だが、その攻撃は単なる番人ではないものに思えた。
「これは...ヴォルダンが送り込んだものか...？」テルヘルが低い声で言った。イシェは恐怖を感じながらも、ラーンの後ろに立ち、彼を守るように剣を構えた。
激しい戦いが続く中、ついに彼らは敵を倒した。だが、その戦いは彼らの想像以上に長く、残酷なものだった。イシェは負傷し、ラーンも力尽きかけていた。テルヘルは冷静さを保ちながら戦い続け、何とか勝利をつかんだ。
「...これで終わりだ」。テルヘルが言った。イシェは疲れた様子で頷き、ラーンの顔には安堵の色が見えた。だが、その時、突然、壁から声が聞こえてきた。「お前たちを許さぬ...」。
壁の奥から、何者かの影がゆっくりと現れてきた。それは、ヴォルダンの兵士ではなく、かつてヴォルダンに処刑された者が蘇った姿だった。彼は復讐を果たすために、この遺跡に封印されていたのだ。
ラーンは絶望的な表情を浮かべる。イシェは恐怖で言葉を失い、テルヘルだけが冷静さを保ち、剣を握りしめた。彼らの前に立ちはだかる影は、彼らの未来を閉ざす暗闇のように見えた。