ラーンが、いつものように大口を開けて笑った。「おい、イシェ！今日は絶対に何か出る気がするぞ！」
イシェは眉間にしわを寄せながら、地図を広げた。「そんな甘い話はないわよ。遺跡探索なんて、そんな簡単なものではないのよ。特にここ最近、ヴォルダンとの緊張が高まっているせいで、兵士が頻繁に出入りするからなおさらだ」
ラーンの笑顔は少し曇った。「そうだとしても、何かしら面白いものが見つかるかもしれないじゃん？ほら、あの時あの古い剣見つけた時は、結構な値段で売れたじゃないか！」
イシェはため息をついた。「あれは flukeよ。それに、あの剣も結局、テルヘルにほとんど持っていかれたのよ」
「まあ、でも…」ラーンが言葉を濁すその時、テルヘルが背後から声をかけた。「準備はいいか？今日は特に慎重に進もう。ヴォルダンからの情報では、この遺跡には強力な魔物が封印されているらしい」
ラーンの顔色が変わった。「魔物？そんな話聞いたことないぞ！」
「私は情報屋よ。噂を鵜呑みにする必要はないけど、用心するに越したことはないわ」テルヘルは鋭い目で二人を見つめた。「今回は特に注意深く動け。私にも用があるのだ」
遺跡の入り口に立つと、ラーンの心は高鳴っていた。冒険心が疼き、財宝への欲望が彼を駆り立てた。イシェは冷静さを保ち、周囲を警戒しながら地図を確認していた。テルヘルはいつも通りの冷徹な表情で、遺跡の中へと足を踏み入れた。
暗い通路を進んでいくと、壁には奇妙な文様が刻まれていた。ラーンは興味津々で近づこうとしたが、イシェが彼を引き止めた。「待ちなさい！あの文字は危険だ。触れると呪いにかかる可能性がある」
ラーンの好奇心は抑えきれなかった。「そんなの嘘だろう！」
その時、壁から突然、鋭い光が放たれた。ラーンは反射的に身をかわした。光が当たった場所には、何もない。イシェは顔色を蒼白にさせながら言った。「あれは…魔物の目だ！逃げるぞ！」
三人は慌てて走り出した。後ろから魔物の咆哮が響き渡り、足音も聞こえてきた。ラーンの心は恐怖でいっぱいになった。しかし、イシェの声が彼の背中を押した。「落ち着いて！あの通路を右に曲がれば安全な場所に出られるはずだ！」
三人は必死に走り、なんとか安全な場所にたどり着いた。息を切らしながら、振り返ると、魔物の姿は見えなかった。ラーンは震える声で言った。「あ…あれは本当に魔物だったのか…」
イシェは冷静に状況を分析した。「あの魔物は強力だ。我々には勝てない。今日は引き返そう」
ラーンの顔色が曇った。「でも、何も見つからずに帰るなんて…」
テルヘルは冷酷な表情で言った。「今回は運が良かった。だが、次に同じ過ちを繰り返すことはないだろう」
ラーンの心は、冒険心と恐怖の間で揺れ動いた。彼は自分の凡才さに気づき始めたのだ。