「おい、イシェ、今日は俺が先頭だ！」ラーンがいつものように豪快に宣言し、遺跡の入り口へと足を踏み入れた。イシェはため息をつきながら続く。テルヘルは二人を見下ろすようにして、静かに後ろを歩いた。
薄暗い通路を進んでいくと、壁には奇妙な模様が刻まれていた。「何だろうな、これ？」ラーンが壁を指差しながら言った。「聞いた話によると、これは古代の文字らしいけど、解読できるやつはいないんだって」イシェが答えた。「そんなことより、早く宝探しの場所を見つけないと、日が暮れてしまうぞ！」ラーンの目は輝いていた。
彼らは遺跡の中腹にある広間に出た。そこには巨大な石碑が立っていた。「おおっ、これは何か大物だぞ！」ラーンは興奮気味に石碑に近づき、手を伸ばそうとしたその時、イシェがラーンの腕を掴んだ。「待て、ラーン！あの石碑には何か刻まれているぞ。近づきすぎると危険かもしれない」
テルヘルは石碑に刻まれた文字をよく観察していた。「これは…ヴォルダン王国の紋章だ」彼女は低い声で言った。「この遺跡はヴォルダン王国のもので、恐らく重要な軍事施設だった可能性がある」ラーンの顔色が変わった。「ヴォルダンか…あの国とは関わりたくないな」彼は mutter して、石碑から遠ざかった。
イシェはテルヘルに問いかけた。「なぜヴォルダンの紋章がここに？」テルヘルは答えるのをためらった。彼女は自分の過去を誰にも打ち明けていなかった。ヴォルダン王国との因縁は、彼女にとって深い傷口だった。
「何かの鍵になるかもしれない」テルヘルは言った。「この遺跡にはヴォルダン王国と何か関係があるはずだ。もし、この遺跡の秘密が解ければ、ヴォルダンに復讐する手掛かりが見つかるかもしれない…」彼女の目は冷酷な光を放っていた。
ラーンはイシェに目を向け、「おい、どうするんだ？俺たちは宝を探しに来たんじゃないのか？」と問いかけた。イシェはテルヘルの言葉を聞いた後、深く考え込んだ。「この遺跡には何かがある。それは確かだ」彼女は言った。「でも、ラーンの言う通り、私たちは宝探しをするためにここに来たんだ。ヴォルダン王国との関わりは後で考えよう」
こうして、三人は遺跡の奥へと進んでいった。彼らの前に広がるのは、未知の世界と、そして自分たちの運命を左右するかもしれない秘密だった。