ラーンが石を蹴飛ばすように遺跡の入り口に足を踏み入れた時、イシェは背筋をゾッとした。いつもならラーンの無謀さに呆れて説教をしたが、今日は言葉にならない何かを感じた。空気が重く、静寂が不気味に響き渡る。
「なんか変だぞ」
イシェの呟きにラーンは振り返り、ニヤリと笑った。
「そんなこと言わずに、早く中に入ろうぜ!俺たちの大穴が見つかるかもしれないんだ!」
だが、彼のいつもの明るさはどこか薄れて見えた。テルヘルは眉間に皺を寄せながら遺跡の中を見渡した。彼女の鋭い目は、壁に刻まれた奇妙な模様に注目していた。まるで凝り固まったエネルギーが脈打っているようだ。
「ここには何かがある」
テルヘルは静かに言った。その声は普段よりも低く、力強かった。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。いつもは軽口を叩き合いながら遺跡に挑む三人が、初めて共通の緊張感に包まれていた。
奥へと進むにつれて、空気がさらに重くなり、息苦しくなった。壁には複雑な模様が刻まれ、まるで凝固した魔力の波紋のように広がっている。イシェは背筋が凍りつくような感覚に襲われた。
「ラーン…」
イシェが声をかけようとした時、突然床が崩れ始めた。ラーンの足元から砂が崩れ落ち、深い闇へと吸い込まれていく。
「うわっ!」
ラーンは叫びながらバランスを崩し、イシェの手を掴もうとした。だが、その瞬間、地面が完全に崩壊し、三人は奈落に突き落とされた。