ビレーの朝はひんやりとしていた。ラーンがいつものように寝坊し、イシェが彼を起こすのに苦労している。今日はテルヘルとの約束の日だ。遺跡探索で、彼女はいつもより高い報酬を提示してきた。
「大穴に近づくかもしれない」とテルヘルは言ったのだ。その言葉がラーンの心を躍らせ、イシェの眉間に皺を寄せた。
遺跡への道は険しく、冷たい風が吹き荒れた。ラーンは軽快な足取りで先頭を歩く。イシェは後ろから彼の様子を伺いながら、静かに呟いた。「本当にあの遺跡に入るつもりなのかしら？」
「ああ、テルヘルが言うには、あの遺跡には特別な何かがあるらしいんだ」とラーンの返事はどこか自信に満ちていた。
テルヘルは遺跡の入り口前で待っていた。凛とした表情で、二つの宝石を輝かせているように見えた。「準備はいいか？」
イシェは深く息を吸い、小さく頷いた。ラーンはいつものように笑顔を見せた。遺跡に入る前に、イシェは一瞬だけ、ラーンの顔に影が走るのを目撃した。
「さあ、大穴を目指して」テルヘルはそう言うと、遺跡へと足を踏み入れた。
日が暮れ始めた頃、彼らは広大な地下空間へとたどり着いた。壁一面には、複雑な模様が刻まれており、不思議な光を放っていた。空気中に漂う湿った土の匂いの中に、かすかな甘さを感じた。イシェは背筋に寒気が走った。
「ここが…大穴か…」ラーンの声が震えていた。「本当にここに何かあるのか？」
テルヘルは静かに頷き、壁の模様を指差した。「ここには古代の知識が眠っている。それを手に入れるためには、危険な試練を乗り越えなければならない」
イシェはラーンに不安そうに目を向けたが、彼はまるで興奮しているようだった。
「さあ、行くぞ！」
ラーンは剣を抜き、遺跡の奥へと進んでいった。イシェはテルヘルと共に彼を追いかけた。彼らの背後には、冷たい風が吹き荒れ、壁から不思議な光がちらついていた。