凍えそうな朝だった。ビレーの空気が特に冷たく、ラーンの息が白く立ち上る。イシェは薄手のマントをぎゅっと体に巻きつけながら、「今日は遺跡に入る前に温かいスープでも飲もうよ」と提案する。ラーンは鼻をククル。「いいんだいいんだ、そんな時間はないぞ！今日はテルヘルさんが大金積んでくれるって聞いただろ？大穴が見つかったら、俺たちの人生が変わるぞ！」
イシェはため息をついた。ラーンの熱意にはいつもついていけない。特に最近は、テルヘルが加わってからというもの、彼の行動はますますエスカレートしているように思えた。テルヘルは今日はどこか様子が違った。いつもより鋭い眼光で遺跡の地図を見つめ、唇を噛み締めている。
「何かあったのか？」ラーンの問いに、テルヘルは小さく頷いた。「ヴォルダンとの国境付近で、また動きがあったようだ。兵站が増強されているらしい」
イシェが顔を曇らせた。「またか...」。ビレーにもヴォルダンの影は確実に迫っていた。
凍てつくような空気が遺跡にまで入り込んでくるようだった。ラーンは剣を手に取り、いつもより強く握りしめた。「よし、行くぞ！今日は絶対に大穴を見つけてやる！」と、彼は意気込みを燃やした。イシェは彼の背中に手を当て、小さく頷いた。テルヘルは二人を見つめ、氷のように冷えた視線を向けて言った。「成功を祈る。そして忘れるな...我々はまだ始まったばかりだ」