ビレーの夕暮れは早く、茜色の光が遺跡群に長く伸びて影を落とす。ラーンが、埃まみれの剣を片付けながら、ため息をついた。
「また空振りかよ。イシェ、今日は一体何にも見つからなかったぞ」
イシェは細身の体で器用に石の残骸を避けて、小走りで近づいてきた。「そうね。今日は特に収穫がなかったわ。でも、この遺跡群は広大だし、まだ探索しきれてない場所も多いのよ。」
ラーンの顔色が曇った。「そうも言ってられないんだ。次の仕事がないと、食料すら買えなくなるぞ」
イシェの視線は彼からテルヘルに移った。彼女はいつも通り、不気味な静けさで遺跡の残骸を眺めているようだった。ヴォルダンに奪われた過去を背負い、復讐に燃える彼女は、この遺跡探索にも独自の目的を持っていたはずだ。
「テルヘルさん、何か見つけたんですか？」イシェが尋ねると、テルヘルはゆっくりと視線を上げ、鋭い目をラーンに向けた。
「いいえ。まだ何もないわ」彼女の言葉にはどこか冷酷な響きがあった。「しかし、この遺跡群は、かつて栄華を極めた文明の残骸であることは間違いない。その凋落の理由を探ることで、我々の目的にも繋がるかもしれない。」
ラーンの眉が Knit together. 彼はテルヘルの言葉にいつも理解しづらいものを感じていた。復讐という強い意志に突き動かされた彼女には、彼らのような些細な願いは理解できないのかもしれない。
イシェはラーンの肩を軽く叩き、「気を取り直そうよ、ラーン。明日は新しい遺跡に挑戦するのよ」と励ました。ラーンの顔色が少しだけ明るくなった。
「そうだろ！いつか大穴を見つけるんだ！あの時みたいに、金貨の山が目の前に広がる日が来るんだ！」彼は過去の輝かしい思い出を語り始めた。イシェは苦笑いした。ラーンの夢は、いつまでも色褪せないだろうか。
夕暮れの光が消え、星が夜空に輝く頃、ビレーの街灯が一つずつ点灯していく。遺跡群は、深い闇に包まれ、かつての栄華を静かに偲んでいた。