冷たい風がビレーの街を吹き抜けた。日も短くなり、太陽は早く沈み始めた。冬の訪れを感じさせる空気にラーンは肩をすくめた。
「そろそろ冬至だな。今年は雪が深いんじゃないか？」
イシェが呟いた。「そうだな。遺跡探索も難しくなるだろう」
二人はいつも通り、街の広場に面した小さな酒場で朝食を摂っていた。テーブルの上には粗末なパンと温かいスープが置かれていた。ラーンは食欲がない様子でスープを少しだけすすり、イシェは黙々とパンを食べていた。
「今日の依頼は？」
ラーンの問いかけに、イシェは小さく頷いた。
「テルヘルから依頼があった。いつものように遺跡の調査だ。今回は南西部の廃墟らしい」
「また遺跡か…。いつになったら大穴が見つかるんだ？」
ラーンはため息をつきながら言った。イシェはラーンの顔をじっと見つめて、静かに言った。
「あの日以来、テルヘルは何かを探している。私たちもその一部なのかもしれない」
イシェの言葉に、ラーンは少しだけ考え込んだ。あの日からテルヘルは表情が硬く、いつもより口数少なくなった。ヴォルダンとの因縁を知っているのはラーンとイシェだけだった。
「ああ、そうだ。あの日、テルヘルが言ったことを思い出した」
ラーンの言葉にイシェは顔を上げた。
「何と言った？」
「冬至の日、何かが起こると言っていたはずだ」
イシェの眉間に皺が寄った。「冬至…？」
二人はしばらく沈黙し、外を眺めた。街はまだ冬の影から覚めていないように見えた。
その時、酒場のドアが開き、テルヘルが入ってきた。彼女の顔はいつもより険しく、黒いコートからは冷たい風が漂っていた。
「準備はいいか？今日こそ、何かが変わる」