ラーンの粗雑な斧の刃が、埃と影にまみれた遺跡の壁を叩き込んだ。石塵が舞い上がり、イシェは咳払いをした。
「ここじゃない。また違う場所を探さないとな。」
イシェの言葉通り、壁の裏には何も無かった。ラーンは肩を落とした。「そうか…」
彼らは数日前にテルヘルから依頼を受けていた。彼女は古い写真を見せ、その中に写っている遺跡の一部を探すと伝えた。報酬も高額だったため、2人は喜んで引き受けたが、写真の内容は曖昧で、遺跡の場所さえ特定するのが難航していた。
「もしかしたら、あの崩れた塔の近くにあるかもしれないよ」
イシェは地図を広げ、指を動かした。「テルヘルが言ったように、写真には塔らしきものも写っているし…」
ラーンは頷きながら、再び立ち上がった。しかし、その時、イシェが何かを見つけた様子で声を上げた。
「ラーン、見て！」
彼女は崩れた壁の隙間から覗き込み、小さな声で呟いた。「何かある…光が見える」
ラーンの心は高鳴った。もしかしたら、ついに大穴が見つかるかもしれない。興奮を抑えながら、二人で石をどかしていくと、そこに一枚の金属板が現れた。表面には複雑な模様が刻まれていて、その中心には小さな宝石が埋め込まれていた。
「これは…」
イシェは目を丸くした。「写真と同じ…！」
宝石の輝きは、まるで生きているかのように脈打つように見えた。ラーンは胸を躍らせながら、そっと手を伸ばしたその時、背後から冷たい声が聞こえた。
「待て」
テルヘルが立っていた。彼女の表情は硬く、剣を握り締めていた。
「これは私の物だ」