ビレーの朝焼けは、埃っぽい空気を茜色に染めていた。ラーンがいつものように寝坊し、イシェが彼を起こすために小石を投げつけている。二人は小さな屋台で粗末な朝食を済ませ、今日も遺跡に向かう準備をしていた。
「今日はどこ行くんだ?」
イシェは、ラーンの寝癖を直しながら尋ねた。ラーンの顔は、いつも通りの無邪気な笑顔で、「今日の気分は…あの東の丘にある遺跡だな!」と答えた。イシェはため息をついた。「また、あの崩れかけの廃墟? 何度も言っていて、何も見つからないだろう。」
「見つけるぞ!いつか大穴を掘り当てるんだ!」ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の熱意に苦笑した。
テルヘルがビレーに到着したのは、日が高くなってからだった。彼女は黒づくめの旅装を身にまとい、鋭い眼光で周囲を見回していた。ラーンとイシェの住む貧民街は、彼女の目にはあまりにも粗雑に見えた。しかし、彼女は目的のためには場所を選ばない。二人が待っている小さな小屋に、彼女は静かに足を踏み入れた。
「今日から一緒に仕事だ。」テルヘルは、簡潔に言った。ラーンの顔は一瞬曇ったが、「了解だ!」とすぐに明るく答えた。イシェはテルヘルの冷酷な目つきに警戒心を抱いていたが、彼女の持つ情報と資金には興味があった。
遺跡の入り口は、崩れ落ちた石で塞がれていた。ラーンが力強く石をどけると、薄暗い通路が現れた。イシェは懐中電灯の光を当てながら、慎重に進んでいった。テルヘルは後ろから二人をじっと見つめていた。
遺跡内部は、湿り気が多く、不気味な静けさに包まれていた。壁には古代の文字が刻まれており、イシェはそれらを熱心に観察していた。ラーンは飽き足らず、壁を叩いたり、石を持ち上げたりしていた。テルヘルは彼を睨みつけながら、「落ち着いて行動しろ」と警告した。
突然、壁から奇妙な音が聞こえた。イシェが懐中電灯の光を壁に向けると、そこには小さな穴が開いていた。穴からは、微かな光が漏れているのが見えた。
「何かあるぞ!」ラーンは興奮して叫んだ。テルヘルも興味を示し、三人は慎重に穴へと近づく。穴から差し込む光は、奇妙な模様を壁面に投影していた。イシェは息をのんだ。「これは…」と呟きながら、壁の模様を写生しようと手に取った。
その時、背後から不気味な音がした。三人は振り返ると、巨大な影が彼らを襲いかかろうとしていた。