ラーンが巨大な石の扉に剣を突き立てた。「よし、開いたぞ！」 イシェは眉間に皺を寄せながら扉の隙間を覗き込んだ。「本当にここに入るの？ ラーン、また危険な遺跡を選んだんじゃないだろうな？」 「大丈夫だ、イシェ。今回は大穴が見つかる予感がする！ほら、あの石畳、古代文明の技術じゃないか？」 ラーンの目は輝いていた。イシェはため息をつきながらも、後ろを振り返った。ビレーの街灯が遠くに見え、薄暗い遺跡の入り口はまるで巨大な獣の口のようだった。
「よし、行くぞ！」ラーンは剣を抜いて先導した。イシェは小さく頷き、テルヘルに視線を合わせた。テルヘルはいつものように冷静に周囲を警戒していた。「この遺跡、何か変だ」と呟いた。 内部は湿気とカビ臭い空気が漂い、石造りの壁には奇妙なシンボルが刻まれていた。イシェは石畳の上で足を踏みしめると、不気味な音が響き渡った。 「ラーン、気を付けて！」イシェの声が途絶えた瞬間、床が崩れ始め、ラーンは深淵に落下した。
イシェは驚いて駆け寄ろうとしたが、テルヘルに制止された。「危険だ、今は下を見るな。何か罠が仕掛けられている可能性がある」 イシェはテルヘルの言葉に従い、慎重に周囲を調べ始めた。すると、崩れた床の近くで小さな石版を見つけた。石版には古代文字で書かれたメッセージが刻まれていた。テルヘルが読み解くと、そこには「深淵の守護者」という単語があった。「これは…大変だ…」テルヘルは顔色を変えた。「ラーンの命を賭けなければならないかもしれない」
イシェは不安でいっぱいだったが、ラーンを助けるためならどんな危険もいとわない決意をした。テルヘルと共に、深淵に続く道へと足を踏み入れた。