ラーンが豪快に笑う。目の前には、錆び付いた剣と、幾つかの破損した陶器片だけが並んでいた。
「また大穴か!」
イシェはため息をつきながら、剣を丁寧に拭き始めた。「あの洞窟の奥深くまで潜ったのに、こんなものだけとは…」
ラーンの豪快な笑い声に、テルヘルは薄暗い目を向ける。「今回は私の指示に従わなかったですね。私は言いましたでしょう?あの石碑には何かが隠されていると。」
「石碑?ただの石ころだろ!」
ラーンは剣を肩に担ぎ、イシェの視線を感じながら、わざとらしく腕を組んだ。「イシェもそう思うだろ?」
イシェは苦笑した。「ラーンの言う通り、あの石碑はただの石ころだったかもしれない。でも…」
テルヘルが鋭い視線を向ける。「でも?」
イシェは一瞬躊躇し、言葉を続ける。「でも、あの石碑の表面に刻まれていた模様…どこかで見たことがあるような気がしたんです。」
「どこで?」
テルヘルの問いかけに、イシェは首を振った。「思い出せません。でも、きっと何か意味があるはずです。あの遺跡には、まだ何か隠されているはず…」
ラーンが不機嫌そうに言った。「またイシェが謎の話を持ち出して…もういい加減にしてくれよ!」
イシェは少しだけ顔を赤らめた。「違うんです!あの石碑の模様、私はどこかで見たことがあるんです!」
「どこで?」テルヘルが繰り返した。
イシェは言葉を失い、ただ考え込んだ。その様子を見て、テルヘルは小さく頷いた。
「いいでしょう。次の遺跡に進む前に、少し時間を下さい。」
ラーンの不機嫌な顔とは対照的に、イシェは希望の光を宿す目をして、テルヘルの言葉に耳を傾けた。
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