「よし、今回はあの崩れた塔だ」ラーンが地図を広げ、指を走らせた。「以前、イシェが調査した場所だな。地下室で何かを発見したって話だったはずだ」
イシェは眉をひそめた。「記憶違いじゃないの？ あれはただの石棺だったわよ。特に価値のあるものが入ってたわけじゃない」
「そうだ、石棺！」ラーンは目を輝かせた。「もしかしたら、中に何か隠されているんじゃないか？ 今回は念入りに探してみようぜ！」
イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な発想にはいつも翻弄される。だが、彼の熱意には心を動かされるものがあった。
「わかったわ」とイシェは言った。「でも、今回は特に注意深く行動する必要があるわね。あの塔はヴォルダンの兵士が以前通りかかったらしいのよ。何か罠が仕掛けられている可能性もあるわ」
テルヘルは沈黙を保ち、二人のやり取りを冷ややかに見つめていた。彼女は二人とは違い、遺跡探索の目的は財宝や冒険ではない。ヴォルダンへの復讐のため、あらゆる手段を尽くすのだ。
「では、出発だ！」ラーンの元気な声が響き渡り、三人は塔へと向かった。崩れた石壁の間を縫うように進むと、薄暗い地下室にたどり着いた。石棺は中央に置かれており、埃をかぶっていた。
ラーンが興奮気味に石棺の蓋を開けようとしたその時、イシェが彼の手を強く押さえた。「待った！」彼女は警告するように言った。「何か変だ…」
彼女の直感は的中した。石棺の蓋を開ける瞬間、床から鋭い棘が生え上がり、ラーンを襲おうとした。彼は驚いて後ずさりし、かろうじて棘をかわすことができた。
「罠だ！」イシェが叫んだ。
テルヘルは冷静に状況を分析した。これは単なる罠ではない。誰かが意図的に彼らをここに導いたのだ。そして、その目的は何か？
彼女は鋭い視線をラーンに向け、再確認するように言った。「お前はヴォルダンとの関係性があるのか？」